運送人の使用人が荷送人から引渡を受けた貨物を自動車に積込んだ際、後部扉を下しただけで施錠せず、また扉が完全にかんごう(嵌合)してボタンを押さない限り開扉しない状態になつているかの確認もしないまま、次の集荷先に向つて発車したため、右貨物が路上に落下して滅失した場合には、右貨物の滅失について、右使用人に重大な過失がある。
貨物の運送中における滅失について運送人の使用人に重大な過失があるとされた事例
商法581条
判旨
失火責任法にいう「重大な過失」の有無の判断において、使用人の過失は使用者の過失と同視され、その程度が著しい場合には使用者の責任が肯定される。
問題の所在(論点)
失火責任法の適用において、使用人の過失が「重大な過失」に該当するか否かの判断基準、およびそれが使用者の責任を基礎付けるか。
規範
失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)における「重大な過失」とは、通常人に期待されるわずかな注意を払うことによって容易に火災の結果を防止できたにもかかわらず、漫然これを見過ごしたという、著しい注意欠如の状態をいう。使用人による失火の場合、その過失が右の程度に達していれば、使用者に重大な過失があったものとみなされる。
重要事実
上告人(使用者)の使用人であるDが、火気の取り扱いにおいて不注意な行為を行った。その結果、火災が発生し損害が生じた。原審はDに重大な過失があったと認定し、上告人の責任を認めたため、上告人がその認定を不服として上告した。
あてはめ
本判決文からは具体的な過失態様は不明であるが、原審が適法に確定した事実によれば、使用人Dには通常期待されるわずかな注意すら欠いていたと認められる著しい過失が存在した。このような使用人の職務上の重大な失当は、使用者自身の重大な過失と同視すべきものであり、上告理由が主張するような違法性は認められない。
結論
上告人の使用人Dに重大な過失があったとする原審の認定判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
失火責任法における「重過失」の認定において、行為者が使用者本人でない場合でも、その具体的な不注意の程度が著しければ同法の但書が適用されることを示す。答案上では、民法715条との関係で、失火の場合には使用者責任の成立に際しても「重過失」という高いハードルが課されることを論じる際に参照する。
事件番号: 昭和34(オ)855 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法715条1項但書に基づく使用者責任の免責が認められるためには、被用者の監督について相当の注意を尽くしたことを要するが、監督責任を尽くしたといえない場合には免責されない。また、被害者に過失がある場合には、民法722条2項により賠償額を減額することができる。 第1 事案の概要:上告会社(使用者)の…
事件番号: 昭和41(オ)64 / 裁判年月日: 昭和41年6月3日 / 結論: 棄却
ストーブおよびその煙突に腐蝕ないし接合不良の箇所があり、過去二年間に三回も小火を出したことがあつて、消防署や隣人から注意を受けていたが、僅かに消火器を備えていた程度で、ストーブから約三〇糎の距離の場所に依然として木綿や毛糸のボロ屑を山積しており、出火当日も、午後七時半頃ストーブの残り火があつたのに、その後見廻りもしなか…