会社を当事者とする訴訟において会社代表者が提出した第一回口頭弁論期日の変更申請書にその事由として「当日東京に出張の為」との記載があるのみでは、民訴法一五二条五項にいう「顕著ナル事由」の存する場合にあたらない。
民訴法一五二条五項にいう「顕著ナル事由」の存する場合にあたらないとされた事例
民訴法152条5項
判旨
口頭弁論期日の変更は、当事者の合意がない限り「顕著な事由」がある場合にのみ許され、単なる「出張」という程度の理由ではこれに該当しない。
問題の所在(論点)
当事者の合意がない場合において、会社代表者の「出張」が口頭弁論期日を変更するために必要な「顕著な事由」に該当するか。
規範
口頭弁論期日の変更は、当事者の合意がある場合を除き、「顕著な事由」があるときに限り許される(民事訴訟法93条3項、旧152条5項参照)。ここでいう「顕著な事由」とは、期日の変更を認めなければ当事者に著しい不利益が生じると認められるような、客観的かつ重大な事情を指す。
重要事実
控訴審(原審)の第一回口頭弁論期日について、上告人(控訴人)会社の代表者が、期日変更申請書を提出した。その申請書に記載された変更の事由は、単に「当日東京に出張のため」というものであった。原審はこの申請を却下し、期日を進行させた。
事件番号: 昭和49(オ)787 / 裁判年月日: 昭和50年7月21日 / 結論: 棄却
準備手続を経ない口頭弁論期日(第一回期日を除く。)の変更は、当事者の合意がある場合でも、顕著な事由の存在が明らかでないかぎり、これを許さなければならないものではない。
あてはめ
本件において、上告人が主張する期日変更の理由は「当日東京に出張の為」という一点に尽きる。このような単なる出張の予定は、当事者側の主観的・便宜的な事情に過ぎず、裁判を遅延させてまで期日を変更しなければならないような、やむを得ない客観的事由とはいえない。したがって、本件申請は「顕著な事由」があるときにあたらないと解される。
結論
本件の「出張」という事由のみでは、期日変更に必要な顕著な事由があるとはいえず、申請を却下した原審の措置は適法である。
実務上の射程
民事訴訟法93条3項の「顕著な事由」の具体的判断基準として機能する。司法試験の答案作成においては、手続的保障と裁判の迅速・遅延防止の比較衡量の観点から、当事者の個人的な事情(出張、他件の期日重複等)が「顕著な事由」として認められるか否かを検討する際の否定例として引用すべきである。
事件番号: 昭和24(オ)251 / 裁判年月日: 昭和27年5月6日 / 結論: 棄却
病気で出頭できないことを理由として一審以来一度も口頭弁論期日に出頭しなかつた一方の当事者が、同一の理由で期日の変更を申請したのに対し、裁判所がこれを容れずその不出頭のまま弁論を終結しても違法ではない。