借家法一条の二は、憲法二九条に違反しない。
借家法一条の二と憲法二九条
借家法1条ノ2,憲法29条
判旨
借家法1条の2(現在の借地借家法28条等に相当)が規定する更新拒絶の正当事由制度は、憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
旧借家法1条の2(現行借地借家法28条の「正当の事由」の原型)による建物解約権の制限が、憲法29条の保障する財産権を侵害し、違憲とならないか。
規範
財産権の行使は、公共の福祉に適合するように法律で制限することができる(憲法29条2項)。借家法1条の2が、建物賃貸借の更新拒絶に「正当の事由」を要求し、家主の解約の自由を制限することは、国民経済および国民生活の安定を目的とする合理的な公共の福祉による制限であり、憲法29条に違反しない。
重要事実
上告人は、建物の賃貸借契約に関して借家法1条の2が適用されることにより、自らの財産権が不当に侵害されていると主張した。上告人は当該規定が憲法29条に違反すると主張して特別上告を申し立てたが、原審等の詳細な事実は本判決文からは不明である。
あてはめ
最高裁判所は、昭和37年6月6日大法廷判決の趣旨を引用し、借家法による権利制限の合憲性を肯定した。家主の建物返還請求を「正当の事由」がある場合に限定することは、賃借人の居住権や生活基盤の保護という公共の福祉の観点から必要かつ合理的な制限といえる。したがって、私有財産権の絶対性を一部修正したとしても、公共の福祉の範囲内であると解される。
結論
借家法1条の2は憲法29条に違反しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
生存権的基本権の要請に基づく私法の修正(社会法的制限)が憲法29条2項の「公共の福祉」として合憲とされる典型例。答案上は、借地借家法による私的自治の修正の憲法根拠を示す際の準拠枠組みとして利用できる。
事件番号: 昭和29(オ)800 / 裁判年月日: 昭和30年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の賃貸借契約の解約申入れにおける正当事由の有無は、賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情等の諸般の事情を総合考慮して判断されるべきである。 第1 事案の概要:上告人(賃貸人)が被上告人(賃借人)に対し、本件家屋の賃貸借契約の解約申入れを行った。原審(第一審判決を引用)は、上告人側の事情と…