判旨
自由な意思に基づき締結した契約により家屋明渡債務を負担した者に対し、裁判所がその履行を命ずることは憲法25条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
自由な意思による契約に基づき家屋明渡債務を負う者に対し、裁判所がその明渡しを命ずることが、憲法25条1項の生存権保障に抵触するか。また、親族間の扶養義務を定めた民法877条がその妨げとなるか。
規範
憲法25条1項は、生存権を保障する規定であるが、個人の自由な意思に基づいて締結された私法上の契約の効力を制限し、その契約に基づく債務(家屋明渡債務等)の履行を命ずる裁判所の判決を禁止する趣旨までを含むものではない。
重要事実
上告人(被告)は、相手方との間で本件建物の使用貸借契約を締結していたが、当該契約が終了した。建物所有者である相手方は、契約終了に伴う使用貸借の返還請求権および所有権に基づき、建物の明渡しを求めて提訴した。これに対し上告人は、明渡しを命ずることが憲法25条および民法877条(扶養義務)に違反すると主張して争った。
あてはめ
上告人は自らの自由な意思に基づき、本件建物の使用貸借契約を締結し、契約終了時には建物を明け渡すべき義務を負担していた。裁判所がこの契約上の義務の履行として明渡しを命ずることは、私的自治の原則に基づく契約の実現にすぎない。したがって、生存権を保障する憲法25条1項の趣旨に徴しても、かかる裁判が違憲であるとはいえず、民法877条に関する主張も独自の見解にすぎない。
結論
自由な意思で締結された契約に基づく家屋明渡しの請求を認容することは、憲法25条1項に違反せず、正当である。
実務上の射程
生存権を根拠とした私法上の義務履行拒絶の可否に関する射程を示す。生存権規定は国家の責務を定めるものであり、私人間における契約上の義務履行を免れさせる直接的な効力(ないし裁判規範性)を持たないことを確認する文脈で使用できる。
事件番号: 昭和25(オ)24 / 裁判年月日: 昭和27年11月18日 / 結論: 棄却
他人の賃借居住中の家屋を買い受けた者の賃貸借の解約申入も、後記事由(第二審判決理由参照)があるときは、正当の事由がある。