裁判官忌避申立却下決定及びこれに対する抗告事件についての抗告棄却決定は、口頭弁論を経ないでしても、憲法八二条に違反しない。
裁判官忌避申立却下決定及びこれに対する抗告事件についての抗告棄却決定と憲法八二条
憲法82条
判旨
憲法82条が定める対審及び判決の公開原則は、純然たる訴訟事件にのみ適用されるため、裁判官忌避申立却下の決定手続を非公開で行うことは憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
裁判官忌避申立却下決定、およびその抗告棄却決定の手続において、公開法廷での対審(口頭弁論)を経ないことが憲法82条の公開原則に抵触するか。すなわち、忌避手続が「純然たる訴訟事件」に該当するかが問題となる。
規範
憲法82条にいう「裁判」とは、当事者の意思にかかわらず裁判所が終局的に事実を確定し、当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とする「純然たる訴訟事件」についての裁判のみを指す。したがって、これに該当しない手続については、公開法廷での対審を経る必要はない。
重要事実
抗告人らは、裁判官に対する忌避の申立てを行ったが、これが却下された。その却下決定、および抗告裁判所による抗告棄却決定について、口頭弁論(公開法廷における対審)を経ずに裁判が行われたことは、裁判を受ける権利(憲法32条)および対審・判決の公開(同82条)に違反するとして特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和53(ク)138 / 裁判年月日: 昭和53年6月8日 / 結論: 却下
民訴法三九条の規定と右規定により除斥又は忌避申立事件を審判するものとされた裁判機関が憲法一四条の規定に違反して不平等な判断をするかどうかとは関係がなく、民訴法三九条が憲法一四条に違反する旨の違憲の主張は、その前提を欠き、不適法である。
あてはめ
裁判官の忌避に関する決定手続は、裁判の公正を確保するための付随的手続にすぎない。これは、当事者の実体的権利義務の存否を終局的に確定することを目的とする「純然たる訴訟事件」とはいえない。したがって、本件において原審が公開法廷における対審を経ずに裁判をしたとしても、憲法82条に規定する公開の対象となる裁判には該当しない。また、憲法32条は裁判所での裁判を保障するもので、具体的な審理方法(公開・非公開等)までを規定したものではないため、憲法32条違反も認められない。
結論
忌避申立却下決定等の手続は、憲法82条のいう「裁判」に含まれず、口頭弁論を経ないで行うことは憲法違反ではない。本件特別抗告は理由がない。
実務上の射程
憲法82条の「純然たる訴訟事件」と「付随的手続・非訟事件」の区別を示す基本的判例。答案上は、公開原則の射程が争点となる場面で、本判例を引用して当該手続の法的性質(実体的権利義務の確定か否か)を論じる際の基準として用いる。
事件番号: 昭和48(ク)263 / 裁判年月日: 昭和49年2月8日 / 結論: 棄却
民訴法三九条は憲法三二条、一四条に違反しない。
事件番号: 昭和33(ク)164 / 裁判年月日: 昭和33年7月10日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、訴訟法上特に許容された場合に限られ、旧民事訴訟法419条の2(現行336条)に規定する特別抗告の要件を満たさないものは不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し、憲法違反を主張して最高裁判所に抗告を申し立てた。しかし、その抗告理由…
事件番号: 昭和33(し)85 / 裁判年月日: 昭和33年12月15日 / 結論: 棄却
一 裁判官忌避申立却下決定の成立後、その送達前に、その決定をした裁判官を忌避する申立があつても、右決定は、訴訟法上適法に構成された裁判所の裁判たる性質を失うものではない。 二 刑訴第二三条にいう「その裁判官所属の裁判所が、決定を」するというのは、忌避された裁判官所属の裁判所の裁判官をもつて構成される、訴訟法上の意味の裁…
事件番号: 昭和43(し)19 / 裁判年月日: 昭和43年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】忌避申立事件の原審裁判所が、特定の部(民事部等)によって構成されていること自体は、直ちに不適法となるものではない。 第1 事案の概要:抗告人は裁判官に対する忌避申立を行ったが、これに対する異議申立を棄却した原裁判所が名古屋高等裁判所の民事第三部であった。抗告人は、刑事事件に関連する手続(忌避)にお…