一 裁判官忌避申立却下決定の成立後、その送達前に、その決定をした裁判官を忌避する申立があつても、右決定は、訴訟法上適法に構成された裁判所の裁判たる性質を失うものではない。 二 刑訴第二三条にいう「その裁判官所属の裁判所が、決定を」するというのは、忌避された裁判官所属の裁判所の裁判官をもつて構成される、訴訟法上の意味の裁判所が決定する趣旨である。
一 裁判官忌避申立却下決定成立後送達前に、決定をした裁判官が忌避された場合。 二 刑訴法第二三条にいう「その裁判官所属の裁判所が、決定を」するとの意義。
刑訴法23条,刑訴規則34条,刑訴規則11条
判旨
忌避された裁判官がその裁判に関与できないのは、当該裁判官に対する忌避申立事件そのものに限定される。裁判官が特定の裁判を行った後、その告知前に当該裁判官を忌避する申立がなされたとしても、すでに行われた裁判の適法性は失われない。
問題の所在(論点)
忌避の対象となった裁判官が、他の裁判官に対する忌避申立を却下する決定に関与できるか。また、決定成立後・送達前に当該裁判官に対する忌避申立がなされた場合、既になされた決定の効力に影響を及ぼすか(憲法37条1項、刑訴法23条)。
規範
刑事訴訟法23条3項に基づき、忌避された裁判官が決定に関与できないのは、あくまで「その裁判官にかかる忌避申立事件」に限定される。憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平の恐れのない組織・構成をもつ裁判所を意味するが、法定の除斥・忌避事由のない裁判官によって適法に構成された裁判所であれば、これに反しない。
重要事実
申立人は、仙台高裁第1刑事部の裁判官3名を忌避したが、同高裁第2刑事部は10月21日に却下決定をした。申立人は、この決定が送達される前の10月22日に、却下決定に関与した第2刑事部の裁判官3名をも忌避する申立を行い、忌避された裁判官が自ら裁判に関与したのは違憲であるとして異議を申し立てた。原審は、他の裁判官の忌避事件に関与することに制限はないとして異議を棄却した。
事件番号: 昭和23(つ)6 / 裁判年月日: 昭和23年12月24日 / 結論: 棄却
刑訴法第二九條そのものを所論のように憲法第一五條第二項の精神ないし憲法前文の精神に違反するものと論じ去ることはできない。
あてはめ
第2刑事部が行った忌避却下決定は10月21日に成立している。これに対し、当該決定に関与した裁判官らへの忌避申立は翌22日になされており、決定成立後の事情である。決定時に忌避申立がなされていない以上、第2刑事部は適法に構成された裁判所といえる。また、忌避された裁判官が関与を禁じられるのは、自己に対する忌避申立事件のみであり、他者の忌避事件への関与を禁ずる規定はない。したがって、第2刑事部の判断を支持した原決定に憲法違反はない。
結論
忌避申立却下の決定は適法に構成された裁判所によるものであり、憲法37条1項の「公平な裁判所」による裁判としての性質を失わない。
実務上の射程
裁判官の除斥・忌避の範囲を画定する際、23条3項の「その裁判官にかかる忌避申立事件」を厳格に解釈し、連鎖的な忌避による訴訟遅延を防止する実務上の指針となる。答案上は、忌避の効果が及ぶ範囲(当該事件限定)を論述する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和43(し)102 / 裁判年月日: 昭和43年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官について不公平な裁判をするおそれがあるとは認められないとした原決定の判断に違法はない。したがって、不公平な裁判官を忌避できなかったとする憲法37条1項違反の主張は前提を欠き、抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:被告人が、担当の3名の裁判官について「不公平な裁判をするおそれがある」として…
事件番号: 昭和43(し)19 / 裁判年月日: 昭和43年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】忌避申立事件の原審裁判所が、特定の部(民事部等)によって構成されていること自体は、直ちに不適法となるものではない。 第1 事案の概要:抗告人は裁判官に対する忌避申立を行ったが、これに対する異議申立を棄却した原裁判所が名古屋高等裁判所の民事第三部であった。抗告人は、刑事事件に関連する手続(忌避)にお…
事件番号: 昭和25(し)35 / 裁判年月日: 昭和25年8月29日 / 結論: 棄却
本件裁判官忌避申立事件として爭點となる事實は、結局金澤地方裁判所が所論の各證據調の決定をしたことを以つて同裁判所裁判官が「不公平な裁判」をする虞れがあるとするかどうかということである。しかるに、論旨の理由とする憲法違反の各理由は、いずれも同裁判所がした證據調の決定そのものに對する非難であつて、斯る事由は證據調に對する異…
事件番号: 平成9(し)195 / 裁判年月日: 平成9年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が事件の審理を終えて判決を宣告した後は、当該事件の担当裁判官に対する忌避申立てを却下する裁判を取り消す実益が失われるため、これに対する抗告は不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、銃砲刀剣類所持等取締法違反等の被告事件を担当する名古屋高等裁判所の裁判官3名に対し、忌避を申し立てた。同裁判…