裁判官忌避申立て却下決定(簡易却下)についての異議申立て棄却決定に対する特別抗告が利益が失われるものとして不適法とされた事例
刑訴法21条,刑訴法24条,刑訴法433条
判旨
裁判所が事件の審理を終えて判決を宣告した後は、当該事件の担当裁判官に対する忌避申立てを却下する裁判を取り消す実益が失われるため、これに対する抗告は不適法である。
問題の所在(論点)
事件の審理が終了し判決が宣告された後において、当該事件の担当裁判官に対する忌避申立て却下決定の取消しを求める不服申立て(抗告)に実益があるか(訴えの利益の有無)。
規範
裁判官に対する忌避制度は、不公平な裁判がなされるおそれを排除し、裁判の公正とその信頼を確保することを目的とするものである。したがって、裁判所が事件の審理を終結させ、既に判決を宣告した段階においては、当該担当裁判官を職務から排除すべきか否かを争う実益はもはや存在せず、却下裁判を取り消す必要性(訴えの利益)は失われると解すべきである。
重要事実
申立人は、銃砲刀剣類所持等取締法違反等の被告事件を担当する名古屋高等裁判所の裁判官3名に対し、忌避を申し立てた。同裁判所は刑事訴訟法24条に基づきこの申立てを却下し、申立人はこれに対する異議申立てを行った。異議申立てが棄却された後、申立人はさらに抗告を申し立てたが、この抗告がなされたのは、既に被告事件について判決が宣告された後であった。
あてはめ
本件において、忌避申立てを却下する裁判に対する異議申立て棄却決定がなされた後、さらに抗告が申し立てられている。しかし、本件各抗告が申し立てられたのは、平成9年10月2日に対象となる被告事件の判決が宣告された後である。判決が宣告され審理が終了した以上、担当裁判官を排除して公正な裁判を期するという忌避制度の目的を達する余地はなく、却下裁判を取り消す法的実益は認められない。したがって、本件各抗告は不服申立ての利益を欠くものと言わざるを得ない。
事件番号: 平成9(し)171 / 裁判年月日: 平成9年10月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が担当事件の判決を宣告した後においては、当該裁判官に対する忌避申立てを却下した裁判を取り消す実益が失われるため、これに対する準抗告等の不服申立ては不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は、自身に対する覚せい剤取締法違反被告事件を担当する前橋地方裁判所の裁判官Aに対し、忌避の申立てを行った。…
結論
本件各抗告は、判決宣告後になされたものであり、取り消しの実益を欠くため、いずれも不適法として棄却される。
実務上の射程
判決宣告後に忌避申立て(またはその却下に対する不服申立て)を行うことは、特段の事情がない限り訴えの利益を欠き不適法となる。刑事訴訟実務において、審理の遅延を目的とした濫用的な忌避申立てを遮断する論拠として活用できるほか、手続の段階的進行に伴う実益の喪失という一般的な法理を示す際にも参照される。
事件番号: 昭和33(し)85 / 裁判年月日: 昭和33年12月15日 / 結論: 棄却
一 裁判官忌避申立却下決定の成立後、その送達前に、その決定をした裁判官を忌避する申立があつても、右決定は、訴訟法上適法に構成された裁判所の裁判たる性質を失うものではない。 二 刑訴第二三条にいう「その裁判官所属の裁判所が、決定を」するというのは、忌避された裁判官所属の裁判所の裁判官をもつて構成される、訴訟法上の意味の裁…
事件番号: 昭和36(し)44 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
裁判官忌避の申立を却下した裁判の取消請求は、原裁判を取り消しても実益がないようになつたときは、これを許すべきものでないと解すべく、本件取消請求は既にその申立の利益を失つたものと認められるから、本件特別抗告は、右請求棄却決定の当否について裁判をする実益がなく、結局その理由がないことに帰する。
事件番号: 昭和39(し)52 / 裁判年月日: 昭和39年9月29日 / 結論: 棄却
裁判官忌避申立却下の裁判は、当該裁判官が審理を継続している限りにおいては、これを取り消す実益があるけれども、審理を終結し、判決宣告を終つた後においては、右実益が失われるものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和25(し)35 / 裁判年月日: 昭和25年8月29日 / 結論: 棄却
本件裁判官忌避申立事件として爭點となる事實は、結局金澤地方裁判所が所論の各證據調の決定をしたことを以つて同裁判所裁判官が「不公平な裁判」をする虞れがあるとするかどうかということである。しかるに、論旨の理由とする憲法違反の各理由は、いずれも同裁判所がした證據調の決定そのものに對する非難であつて、斯る事由は證據調に對する異…