忌避申立て簡易却下の裁判に対する準抗告が利益を欠くとして不適法とされた事例
刑訴法21条,刑訴法24条,刑訴法429条1項1号
判旨
裁判官が担当事件の判決を宣告した後においては、当該裁判官に対する忌避申立てを却下した裁判を取り消す実益が失われるため、これに対する準抗告等の不服申立ては不適法となる。
問題の所在(論点)
裁判官が被告事件の判決を宣告した後に、当該裁判官に対する忌避申立て却下決定の是非を争う準抗告等の不服申立てを行うことは認められるか(不服申立ての利益の有無)。
規範
裁判官の忌避制度(刑事訴訟法21条等)は、公正な裁判を担保するために特定の裁判官を職務執行から排除することを目的とする。したがって、当該裁判官が既に担当事件の審理を終えて判決を宣告した後は、もはやその裁判官を排除して審理をやり直す対象が存在しないため、忌避申立ての却下決定に対する不服申立てを取り消す法的利益(実益)は失われる。
重要事実
申立人は、自身に対する覚せい剤取締法違反被告事件を担当する前橋地方裁判所の裁判官Aに対し、忌避の申立てを行った。裁判官Aは刑事訴訟法24条に基づき自らこの申立てを却下した。申立人はこの却下裁判に対して準抗告を申し立てたが、当該準抗告がなされたのは、裁判官Aが既に被告事件の判決を宣告した後であった。準抗告棄却決定に対し、さらに抗告がなされたのが本件である。
あてはめ
本件において、準抗告の申立ては裁判官Aが被告事件について判決を宣告した後に行われている。忌避は、不公平な裁判をするおそれがある裁判官を排除するための手続であるが、既に判決が宣告された以上、その裁判官が当該審級の審理に関与することは終了している。ゆえに、忌避申立てを却下した裁判の当否を審理し、これを取り消すことによる実益はもはや存在しない。したがって、判決後の準抗告申立ては不適法であるといえる。
事件番号: 昭和39(し)52 / 裁判年月日: 昭和39年9月29日 / 結論: 棄却
裁判官忌避申立却下の裁判は、当該裁判官が審理を継続している限りにおいては、これを取り消す実益があるけれども、審理を終結し、判決宣告を終つた後においては、右実益が失われるものと解するのが相当である。
結論
裁判官が判決を宣告した後は、忌避却下裁判を取り消す実益が失われるため、本件準抗告およびそれを前提とする本件抗告はいずれも不適法として棄却される。
実務上の射程
裁判官の忌避に関する手続的利益の限界を示すものである。答案上は、忌避申立ての適否を論じる際、時期的限界として「判決宣告前」である必要があることを指摘する根拠となる。判決後の救済は、忌避手続の不備を理由とする上訴(刑事訴訟法379条の訴訟手続の法令違反等)によるべきであり、独立した不服申立て(準抗告・即時抗告)としての利益は失われる点に注意が必要である。
事件番号: 平成9(し)195 / 裁判年月日: 平成9年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が事件の審理を終えて判決を宣告した後は、当該事件の担当裁判官に対する忌避申立てを却下する裁判を取り消す実益が失われるため、これに対する抗告は不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、銃砲刀剣類所持等取締法違反等の被告事件を担当する名古屋高等裁判所の裁判官3名に対し、忌避を申し立てた。同裁判…
事件番号: 昭和31(し)23 / 裁判年月日: 昭和31年9月18日 / 結論: 棄却
同一の裁判官が公職選挙法第二二一条違反の罪における金員の被供与者の公判審理により、金員供与者たる被告人に対する事件の内容につき知識を得たからとて、その一事をもつて忌避の理由があるものとすることはできない。
事件番号: 昭和36(し)44 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
裁判官忌避の申立を却下した裁判の取消請求は、原裁判を取り消しても実益がないようになつたときは、これを許すべきものでないと解すべく、本件取消請求は既にその申立の利益を失つたものと認められるから、本件特別抗告は、右請求棄却決定の当否について裁判をする実益がなく、結局その理由がないことに帰する。
事件番号: 昭和47(し)78 / 裁判年月日: 昭和47年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官が不公平な裁判をするおそれがあるとは認められない場合、刑事訴訟法24条1項に基づく忌避の申立ては却下されるべきである。本決定は、具体的な記録に照らし、憲法37条1項等の違反がないことを確認したものである。 第1 事案の概要:申立人は、背任被告事件の担当裁判長である金子裁判長に対し、不公平な裁…