土地の賃貸人が、一括して賃貸した土地の一部につき賃貸借契約を解除し、賃借人に対し右部分については損害金として残余の部分については賃料として金員の支払を求め、賃借人が右土地の全部につき全額を賃料として弁済のため供託した場合には、右供託は、右賃料部分に関しては有効な弁済供託があつたものと解するのが相当である。
土地の賃貸借契約を一部解除した賃貸人が解除した部分につき損害金として残余の部分につき賃料として金員の支払を求めたのに対し賃借人が全額を賃料として弁済のため供託した場合と供託の効力
民法494条
判旨
一括賃貸された土地の一部について解除の効力を争う賃借人が、土地全部の賃料として弁済供託をした場合、賃貸借が存続する部分の賃料額に相当する範囲で、その供託は債務の本旨に従った有効な弁済供託となる。
問題の所在(論点)
一括賃貸借の一部解除が争われている状況で、賃借人が全土地分を包括して行った弁済供託が、解除されていない部分の賃料債務について「債務の本旨に従った提供」(民法493条)として有効な弁済となるか。
規範
土地の賃貸人が一括して賃貸した土地の一部につき解除を主張し、賃借人がその効力を争って土地全部につき賃料として弁済供託をした場合、賃貸人は存続を認める部分に対応する賃料額を計算して還付を受けることが可能である。したがって、当該供託は、賃貸人に不当な負担や不利を強いるものではない限り、存続部分の賃料債務に関しては債務の本旨に従った有効な弁済供託(民法494条)となり、債務消滅の効果を生ずる。
重要事実
賃貸人Xは、賃借人Yに対し一括して賃貸していた土地225.14坪のうち、一部(79.82坪)について無断転貸を理由に解除し、残部(本件土地)については賃料増額を請求した。Yは解除の効力を争い、従前通り全借地分を一体として、Xの増額請求額に基づく賃料全額を弁済供託した。Xは、本件土地部分のみの還付が容易でないとして、供託による債務消滅を否定し、本件土地の賃料支払を求めた。
あてはめ
本件において、Yは全借地分を賃料として供託しているが、Xは供託規則に基づき、自ら存続を認める本件土地部分の賃料額を計算することで、その範囲での還付を受けることが可能である。このような還付手続は賃貸人に不当な負担を課すものとはいえず、債権者の利益を害しない。したがって、Yがした全土地分の供託のうち、本件土地の相当賃料額に対応する部分は、債務の本旨に従った適法な弁済供託であると評価される。
結論
本件供託は、本件土地の賃料債務に関しては有効な弁済供託であり、Yはその範囲で賃料支払債務を免れる。したがって、Xの請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
一部の解約告知や解除の効力が争われている場面で、賃借人が保身のために全額を供託した場合の救済を認める判例である。答案上は、弁済供託の有効性(債務の本旨に従った提供)が問題となる局面で、債権者(賃貸人)による一部還付の容易性を根拠に、債務消滅を認める論理として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)28 / 裁判年月日: 昭和33年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料の一部を供託しても、別段の事由がない限り、その一部に相当する賃料債務の消滅という免脱の効力は生じない。 第1 事案の概要:本件家屋の賃料は、昭和25年8月に月額5000円へと適法に増額された。しかし、賃借人である上告人は、この増額後の金額に満たない額の弁済供託を行い、賃料債務の消滅を主張して争…
事件番号: 昭和40(オ)1479 / 裁判年月日: 昭和43年6月21日 / 結論: 棄却
原判決認定の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいて、土地の賃料として金員(一三三二万余円)が供託され、また、右供託金につき賃貸人(土地所有者)に対する税金滞納処分により強制的に還付手続が行なわれたとしても、一部弁済の効力を生ずるものとはいえない。