土地の賃貸人が賃借人に対し借地法一二条に基づく賃料増額請求をする場合において、賃借人が複数の共同賃借人であるときは、賃借人の全員に対して増額の意思表示をすることが必要であり、その意思表示が賃借人の一部に対してされたにすぎないときは、これを受けた者との関係においてもその効力を生じない。
共同借地人の一部の者に対してされた借地法一二条に基づく賃料増額請求の効力
借地法12条,民法429条2項
判旨
賃借地上にある建物の所有権が譲渡された場合、原則として敷地賃借権も譲渡され、譲渡人は賃借人の地位を離脱する。また、共同賃借人が存在する土地の賃料増額請求は、賃借人全員に対して意思表示をしなければその効力を生じない。
問題の所在(論点)
1. 建物譲渡後に旧所有者が賃借人たる地位を保持し、新所有者との「共同賃借」関係が成立するといえるか。 2. 共同賃借人の一部に対してのみなされた賃料増額請求の意思表示の効力。
規範
1. 賃借地上の建物所有者が建物を譲渡したときは、特段の事情がない限り、建物の所有権とともに敷地賃借権も譲渡したものと推定され、譲渡人は賃借人の地位を離脱する。 2. 借地法12条(現行借地借家法11条)に基づく賃料増額請求権を行使する場合において、賃借人が複数(共同賃借人)であるときは、その全員に対して増額の意思表示をすることを要し、一部の者に対してなされた意思表示は、その者との関係においても効力を生じない。
重要事実
賃借人A1は、本件土地上に建物を建築して営業していたが、建物所有権と営業をA2に譲渡・移転し、自身は他県へ転居した。地主(被上告人)は、A2のみに対して賃料増額の意思表示を行った。原審は、A1が譲渡後も営業の指導を行い、賃料交渉に同席していたこと等を理由に、A1とA2は共同賃借人の関係にあるとした上で、A2への通知のみで賃料増額の効力を認めたため、上告された。
あてはめ
1. A1は建物所有権を移転し、営業の基礎をA2に譲って遠隔地に転居しており、客観的には賃借人の地位を離脱したと解される。原審が挙げた「助言・指導」や「増額交渉への同席」等の事実は、依然としてA1が賃借人の地位を保有し続けるべき「特別の事情」には当たらない。 2. 仮にA1とA2が共同賃借人であるならば、賃料増額という不可分的な債権債務関係の変動を求める意思表示は、賃借人全員に向けられる必要がある。本件ではA2に対してのみ意思表示がなされており、これを受けたA2との間でも増額の効力は生じない。
結論
原判決破棄。共同賃借人全員に意思表示がなされない限り、賃料増額請求の効力は一切認められない。
実務上の射程
建物の譲渡に伴う賃借権の推定法理を確認するとともに、賃料増額請求が「全員に対してなされるべき」必要的共同訴訟に類する法理(形成権の不可分的な行使)を明示したものである。答案上は、共同賃借人の一人に対する意思表示の有効性が問われた際の決定的な根拠となる。
事件番号: 昭和54(オ)593 / 裁判年月日: 昭和56年4月20日 / 結論: その他
建物所有を目的とする土地の賃貸借契約において、将来の賃料は当事者が協議して定める旨の約定がされた場合でも、当事者が賃料増減の意思表示前にあらかじめ協議を経ず、また、意思表示後の協議が当事者相互の事情により進まないため更にその協議を尽くさなかつたからといつて、賃料増減の意思表示が無効となるものではない。
事件番号: 平成14(受)689 / 裁判年月日: 平成15年6月12日 / 結論: その他
地代等自動改定特約において地代等の改定基準を定めるに当たって基礎とされていた事情が失われることにより,同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には,同特約の適用を争う当事者は,同特約に拘束されず,同項に基づく地代等増減請求権の行使を妨げられない。