所有権保存登記抹消登記手続請求訴訟において勝訴の確定判決を得た原告が被告の口頭弁論終結後の承継人に対し真正な登記名義の回復のための所有権移転登記手続を求める訴は、右確定判決の存在によつて訴の利益を欠くものではない。
所有権保存登記抹消登記手続請求訴訟において勝訴の確定判決を得た原告が被告の口頭弁論終結後の承継人に対し真正な登記名義の回復のための所有権移転登記手続を求める訴と訴の利益
民訴法201条,民訴法第2編第1章訴,民訴法519条
判旨
前訴で登記名義人に対し登記抹消手続を命ずる確定判決を得ていても、口頭弁論終結後の承継人に対し直接の所有権移転登記を求める訴えは、実効的な権利回復のために訴えの利益を有する。
問題の所在(論点)
前訴の被告(登記名義人)に対する登記抹消請求の勝訴判決が確定し、口頭弁論終結後の承継人である被告にその効力が及ぶ場合において、当該承継人に対し直接「真正な登記名義の回復」を原因とする移転登記を請求する訴えの利益が認められるか。
規範
確定判決に基づく執行力(民事訴訟法115条1項3号)が及ぶ場合であっても、前訴判決に基づく承継執行文の付与による登記申請によって得られる法的状態と、後訴で請求する登記手続によって得られる法的状態が異なり、後者が原告の所有名義を直接実現するために必要かつ有効な手段であるならば、後訴の提起は訴えの利益を欠くものではない。
重要事実
被上告人(原告)は建物を新築したが、訴外Dに名義を貸し、D名義で所有権保存登記がなされていた。被上告人はDに対し、所有権確認及び保存登記抹消を求める訴訟(前訴)を提起し、勝訴確定した。しかし、前訴の口頭弁論終結後に、上告人(被告)がDから建物を買い受け、所有権移転登記を経由した。上告人は買受け当時、Dが無権利者であることにつき悪意であった。被上告人は、上告人に対し、真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記を求めて本訴を提起した。
事件番号: 昭和59(オ)594 / 裁判年月日: 昭和63年4月8日 / 結論: その他
物上保証人からされた被担保債権の将来の弁済を原因とする抵当権設定登記又はいわゆる仮登記担保権の仮登記の抹消登記手続を求める請求は、将来物上保証人が被担保債権を弁済することを条件としても、認容することができる。
あてはめ
上告人は前訴の口頭弁論終結後の承継人であり、前訴判決の効力(民訴法201条1項、現115条1項3号)が及ぶ。被上告人が前訴判決に基づき上告人への承継執行文を得て登記申請をしても、上告人の移転登記及びDの保存登記が抹消されるに留まる。この場合、不動産登記法上の原則により登記簿は一旦白紙に戻るか、あるいは前訴の抹消のみでは被上告人の所有名義は直接実現されない。対して、本訴で「真正な登記名義の回復」による移転登記を求めれば、現在の名義人である上告人から直接被上告人へ所有権名義を移すことができ、簡便かつ確実に名義の回復が可能となる。したがって、前訴判決が存在しても、本訴の利益は失われない。
結論
上告人に対する真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続請求は、前訴判決の存在にかかわらず訴えの利益を欠くものではない。
実務上の射程
既判力・執行力の及ぶ承継人が登場した場合でも、承継執行文による解決(抹消登記)より後訴(移転登記)の方が実益がある場合に活用する。特に「真正な登記名義の回復」を請求する際、前訴が「登記抹消」である場合に、後訴の提起を正当化する論拠として有用である。
事件番号: 昭和27(オ)911 / 裁判年月日: 昭和29年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産による代物弁済において、債務消滅の効力発生には登記等の具備を要するが、代物弁済契約自体に基づく所有権移転の効力は、特段の事情のない限り契約の成立(または停止条件の成就)によって生じる。 第1 事案の概要:債務者(上告人)と債権者との間で、期限までに債務の弁済がないことを停止条件とする代物弁済…
事件番号: 昭和38(オ)164 / 裁判年月日: 昭和39年5月26日 / 結論: 棄却
登記義務者の意思に基づかない登記であつても、現在の実体的権利関係に符合するものであるかぎり、右意思に基づかないとして、当該登記の抹消登記請求をすることは理由がない。
事件番号: 昭和38(オ)1137 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
甲乙の共有にかかる家屋について、甲が乙の作成名義を偽造して、売買による前所有権の移転登記をした場合において、甲の共有持分に関しては、右偽造による登記の無効を生ずることはない。
事件番号: 昭和42(オ)1209 / 裁判年月日: 昭和45年4月16日 / 結論: 破棄差戻
未登記建物の所有者が、その建物につき家屋台帳上他人の所有名義で登録されていることを知りながら、これを明示または黙示に承認した場合には、その所有者は、右台帳上の名義人から権利の設定を受けた善意の第三者に対し、民法九四条二項の類推適用により、右名義人がその所有権を有しなかつたことをもつて、対抗することができない。