物上保証人からされた被担保債権の将来の弁済を原因とする抵当権設定登記又はいわゆる仮登記担保権の仮登記の抹消登記手続を求める請求は、将来物上保証人が被担保債権を弁済することを条件としても、認容することができる。
物上保証人からされた被担保債権の将来の弁済を原因とする抵当権設定登記又はいわゆる仮登記担保権の仮登記の抹消登記手続請求における弁済と抹消登記手続義務との関係
民法474条,民法533条
判旨
被担保債権の弁済と抵当権設定登記等の抹消登記手続は同時履行の関係に立たず、弁済が先履行である。そのため、抹消登記請求は、将来の弁済を条件とする条件付判決のみが許容される。
問題の所在(論点)
1.抵当権の被担保債権額は、不動産の価値を限度として限定されるか。 2.被担保債権の弁済と抵当権等抹消登記手続は同時履行の関係に立つか。引換給付判決を認めることができるか。
規範
被担保債権の弁済と、抵当権設定登記および代物弁済予約等に基づく所有権移転請求権仮登記の抹消登記手続とは、同時履行の関係(民法533条)に立つものではなく、弁済が先履行である。したがって、将来の給付の訴えの利益が認められ、被担保債権額を確定できる場合であっても、裁判所は「引換給付」を命じることはできず、弁済を「条件」として抹消登記手続を命じるべきである。
重要事実
上告人は、D工業から訴外Eらに対する3500万円の債権、およびこれを担保する本件建物上の抵当権・所有権移転請求権仮登記(本件担保権)を譲り受けた。被上告人は、本件担保権の抹消を求めて反訴を提起した。原審は、建物の価値等に照らして被担保債権額を2500万円と認定した上で、被上告人による2500万円の弁済と引換えに、上告人に対し本件担保権の各抹消登記手続を命じる「引換給付判決」を言い渡したため、上告人が上告した。
あてはめ
1.抵当権によって担保される債権額は、契約上の債権額によって定まるものであり、不動産の価値が低いからといって当然にその限度に限定される理由はない。原審が債権額を不動産価値相当額に限定した判断は審理不尽・理由不備である。 2.債権の弁済は抵当権消滅の「原因」であり、登記抹消に先立って行われるべき先履行義務である。民法533条の類推適用は認められない。したがって、弁済と引換えに登記抹消を命じた原審の判断は、同時履行の抗弁権の解釈適用を誤っている。正しくは、将来の弁済を停止条件とする判決をなすべきである。
結論
原判決を破棄し、差し戻す。被担保債権の弁済と抵当権等抹消登記は同時履行の関係になく、引換給付判決は認められない。また、被担保債権額の認定についても審理を尽くすべきである。
実務上の射程
抵当権抹消請求訴訟における定石的な判例。答案上は、被告(抵当権者)が同時履行の抗弁を主張しても、本判例を引いて「弁済が先履行である」と切り返す際に用いる。また、判決主文の形として「引換給付」ではなく「条件付判決」になる点も、民事執行法上の重要論点(条件成就の執行文付与が必要な点)と関連して意識すべきである。
事件番号: 平成23(受)2094 / 裁判年月日: 平成25年2月28日 / 結論: その他
1 既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには,受働債権につき,期限の利益を放棄することができるというだけではなく,期限の利益の放棄又は喪失等により,その弁済期が現実に到来していることを要する。 2 時効によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするためには,消滅時効が援用され…
事件番号: 昭和52(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和54年2月22日 / 結論: 棄却
仮登記担保関係において、債権者が履行遅滞を理由に代物弁済予約の完結の意思表示をし、目的不動産につき予め交付を受けていた登記に必要な書類を利用して仮登記に基づく所有権移転登記を経由した場合でも、清算義務を負うときは、債務者は、清算金の提供を受けるまでは債務を弁済して目的不動産を取り戻すことができる。
事件番号: 昭和39(オ)255 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
代物弁済の予約が成立するためには、代物弁済によつて消滅すべき債権の数額が当初より一定していることを要しないが、少くとも一定しうべき基礎が定められていることを要する。
事件番号: 昭和53(オ)528 / 裁判年月日: 昭和54年1月30日 / 結論: 棄却
所有権保存登記抹消登記手続請求訴訟において勝訴の確定判決を得た原告が被告の口頭弁論終結後の承継人に対し真正な登記名義の回復のための所有権移転登記手続を求める訴は、右確定判決の存在によつて訴の利益を欠くものではない。