仮登記担保権の被担保債務の弁済は、当該仮登記の抹消登記手続の履行に対し先給付の関係にあり、これと同時履行の関係に立つものではない。
債務の弁済と担保仮登記の抹消登記手続の履行との同時履行関係の有無
民法369条,民法533条
判旨
仮登記担保権において、被担保債務の弁済と仮登記の抹消登記手続(またはこれに代わる移転登記手続)は、債務の弁済が先履行の関係にあり、同時履行の関係には立たない。
問題の所在(論点)
仮登記担保権の被担保債務の弁済と、当該担保権設定の仮登記の抹消登記手続(又はそれに代わる移転登記手続)との間に、民法533条に基づく同時履行の関係が認められるか。
規範
債務の弁済と仮登記担保権の抹消手続は同時履行の関係(民法533条)にない。その理由は、①仮登記担保設定契約は消費貸借契約に付従する別個の片務契約であり、契約上の牽連性が認められないこと、②同時履行を認めると債権者に過重な負担を課し、被担保債務の弁済を不当に遅延させるおそれがあるため、債務の弁済が先履行とされるべきだからである。
重要事実
被上告人(債務者)は、Dから200万円を借り入れる際、本件各建物の持分について代物弁済予約を締結し、上告人(債権者名義人)のために所有権移転請求権仮登記を経由した。その後、代物弁済の実体がないにもかかわらず本件仮登記に基づく本登記が経由され、Dは清算金の提供なく予約完結の意思表示をした。被上告人は、借受金及び遅延損害金の支払と引き換えに、仮登記および本登記の抹消(または真正な登記名義の回復)を求めて提訴した。
事件番号: 昭和59(オ)594 / 裁判年月日: 昭和63年4月8日 / 結論: その他
物上保証人からされた被担保債権の将来の弁済を原因とする抵当権設定登記又はいわゆる仮登記担保権の仮登記の抹消登記手続を求める請求は、将来物上保証人が被担保債権を弁済することを条件としても、認容することができる。
あてはめ
本件における本登記は実体上の権利関係に符合しない無効なものであり、その抹消請求は認められる。しかし、仮登記の抹消手続については、被担保債務である借受金債務の弁済と対価的な依存関係にない。仮登記担保権は主たる債務である金銭債務に付従するものであるが、同時履行を認めるべき特段の事情はなく、債権者に弁済受領前の抹消準備を強いるのは不当である。したがって、債務の弁済が先履行とされるべきであり、引換給付を求める請求は失当である。
結論
無効な本登記の抹消請求は認められるが、仮登記の抹消については、債務の弁済が先履行であるため、支払との引換給付を命じた原判決は破棄を免れない。仮登記抹消請求の部分は棄却される。
実務上の射程
抵当権の抹消と弁済が先履行の関係にあるとする通説的見解を仮登記担保にも維持した判例である。司法試験においては、担保権の消滅に伴う登記抹消請求において、債務者側から「引換給付判決」を求めても、先履行の関係にあることを理由に(特約がない限り)同時履行の抗弁や引換給付は認められないという論法で使用する。
事件番号: 昭和31(オ)678 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において代金支払債務を所有権移転登記手続に先行させる旨の特約がある場合には、両債務間に同時履行の関係は成立せず、特約に従った履行遅滞による解除権の行使も信義則に反しない。 第1 事案の概要:被上告人(売主)と上告人(買主)との間の不動産売買契約において、代金債務の履行期を所有権移転登記手続…
事件番号: 昭和46(オ)503 / 裁判年月日: 昭和49年10月23日 / 結論: 破棄差戻
一、債権者が、金銭債権の満足を確保するために、債務者との間にその所有の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約又は売買予約により、債務の不履行があつたときは債権者において右不動産の所有権を取得して自己の債権の満足をはかることができる旨を約し、かつ、停止条件付所有権移転又は所有権移転請求権保全の仮登記をしたと…
事件番号: 昭和56(オ)890 / 裁判年月日: 昭和57年1月19日 / 結論: 棄却
抵当債務は、抵当権設定登記の抹消登記手続より先に履行すべきもので、後者とは同時履行の関係に立たない。
事件番号: 昭和55(オ)909 / 裁判年月日: 昭和58年12月19日 / 結論: 破棄自判
保証人が民法四六〇条に基づいて主たる債務者に対して取得するいわゆる事前求償権は、これを自働債権として相殺の用に供しえない。