手形の振出人が、手形用紙に印刷された指図文句を抹消することなく、指図禁止文句を記載したため、手形面上指図文句と指図禁止文句が併記されている場合には、他に特段の事情のない限り、右手形は裏書禁止手形にあたる。
手形面上印刷された指図文句を抹消することなく指図禁止文句が併記された場合と裏書禁止手形
手形法11条2項,手形法77条1項
判旨
手形面上に指図文句と裏書禁止(指図禁止)文句が併記されている場合、特段の事情のない限り、裏書禁止文句の効力が優先し、当該手形は裏書禁止手形に当たると解すべきである。
問題の所在(論点)
手形用紙に印刷された指図文句を抹消せずに、振出人が別途「指図禁止」の文句を記載した場合、当該手形は手形法上の裏書禁止手形(11条2項、77条1項1号)にあたるか、あるいは指図証券としての効力が維持されるか。
規範
手形振出人が、手形用紙に予め印刷された指図文句を抹消せずに、別途指図禁止文句を記載した結果、両文句が手形面上に併記される状態となった場合、手形作成者の真意を重視すべきである。したがって、他に特段の事情のない限り、後から付加された指図禁止文句の効力が印刷された指図文句に優先し、当該手形は手形法11条2項(または77条1項1号)の裏書禁止手形として効力を有する。
重要事実
振出人が手形を作成する際、手形用紙にあらかじめ印刷されていた「・・・殿又はその指図人へ」という指図文句を抹消しなかった。一方で、振出人は当該手形面上に別途「指図禁止」を意味する文言を記載した。その結果、一つの手形面上に指図文句と指図禁止文句が重畳的に存在する状態で流通した。上告人は、当該手形が依然として指図証券としての性質を有するか、あるいは裏書禁止手形としての性質を有するかが争点となり上告した。
あてはめ
本件では、手形用紙に印刷された「指図文句」が存在するものの、振出人はこれと矛盾する「指図禁止文句」を自ら記載している。一般に、定型的な印刷文句と個別的に付記された文言が抵触する場合、作成者の具体的な意思が反映された後者の記載を優先させるべきである。したがって、本件においても特段の事情がない限り、手形作成者が後から付記した指図禁止の意思表示が、定型的な印刷文句に優先して効力を生じるといえる。ゆえに、本件手形は裏書禁止手形としての法的性質を帯びるものと評価される。
結論
本件手形は裏書禁止手形にあたり、裏書の禁止が有効に成立する。
実務上の射程
手形解釈における「記載優先の原則(印刷文言より手書き文言を優先する趣旨)」を確認した判例である。答案上は、手形要件の成否や裏書の効力が争点となる場面で、記載が矛盾する場合の解釈指針として引用する。ただし「特段の事情」がある場合には結論が反転し得る点に留意が必要である。
事件番号: 昭和56(オ)1047 / 裁判年月日: 昭和57年3月12日 / 結論: 棄却
統一手形用紙による約束手形の表面の振出日欄と振出地欄との行間に、ゴム印様のもので押捺された約二ミリメートル大の不動文字からなる「裏書譲渡禁ず」との文言が幅一・二センチメートルにわたり横書で記入されているときは、裏書禁止文句の記載があると認めて妨げない。