約束手形の表面に紙片を附し、振出人が「本手形ハ他人ニ交付又ハ譲渡シタルトキハ無効トスル」旨記載したとしても、約束手形を無効ならしめるものではない。
約束手形が無効でないものと認められた一事例
手形法75条,手形法76条,手形法77条,手形法11条
判旨
手形表面に「他人へ交付・譲渡したときは無効とする」旨の紙片を貼付して指図禁止文言を記載した場合であっても、その記載のみをもって直ちに手形自体が無効になることはない。
問題の所在(論点)
手形に「譲渡したときは無効とする」旨の特約的な文言を付した場合に、当該手形全体が無効となるか。具体的には、指図禁止の意思表示が手形自体の有効性に及ぼす影響が問題となる。
規範
手形法11条2項に定める「指図禁止」の文言を付した手形(指図禁止手形)について、譲渡を制限する旨の記載がなされていても、そのこと自体が手形全体の効力を当然に失わせる原因(絶対的無効事由)となるものではない。
重要事実
本件手形の表面には紙片が貼付されており、そこには「本手形ハ他人ニ交付又ハ譲渡シタルトキハ無効トスル」旨の記載がなされていた。原審はこの記載をもって指図禁止手形であると認めたが、上告人は、かかる文言が存在する以上、手形そのものが無効であると主張して争った。
あてはめ
本件では、手形表面の紙片に「交付または譲渡したときは無効」という、本来の指図禁止(譲渡の効力を制限する)の趣旨を超えるかのような文言が付されている。しかし、手形法上、指図禁止文言は裏書譲渡を制限する効力を持つにすぎず、特約の内容が不適切であったとしても、手形債務の発生そのものを否定する根拠にはならない。したがって、かかる文言があるからといって、上告人が主張するように手形が無効になると解することはできない。
結論
本件文言があるからといって、手形が無効になることはない。指図禁止の記載は手形の効力自体を否定するものではないため、上告を棄却する。
実務上の射程
指図禁止文言の記載方法や表現が異例であっても、手形自体の有効性を維持する判断を示したものである。答案上は、手形要件や有害的記載事項の成否が問題となる場面で、譲渡制限の特約が手形の有効性にまで波及しないことを示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)212 / 裁判年月日: 昭和31年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】手形振出の動機に錯誤があっても、それは振出行為の縁由の錯誤にすぎず、振出行為自体の錯誤とは認められないため、手形行為は無効とならない。 第1 事案の概要:上告人Aは、訴外D物産株式会社に対し、同社が本件手形を「見せ手形」として使用するものと誤信して交付した。しかし、実際にはD社は本件手形を裏書譲渡…