社会保険診療報酬支払基金が保険医療機関からの診療報酬請求に対して行ういわゆる減点の措置は、抗告訴訟の対象となる行政処分にはあたらない。
社会保険診療報酬支払基金が保険医療機関からの診療報酬請求に対して行ういわゆる減点の措置と抗告訴訟の対象
健康保険法43条の9第4項,健康保険法43条の9第5項,社会保険診療報酬支払基金法13条1項3号,行政事件訴訟法3条
判旨
社会保険診療報酬支払基金による診療報酬の減点措置は、保険医療機関の診療報酬請求権等の権利義務に直接不利益な効果を及ぼすものではないため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
問題の所在(論点)
社会保険診療報酬支払基金が保険医療機関に対して行う診療報酬の「減点」措置は、行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分」に該当するか。
規範
行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。したがって、国民の権利義務に直接的な不利益を及ぼす法的効果を持たない行為は、行政処分に当たらない。
重要事実
被上告人(社会保険診療報酬支払基金)は、保険医療機関からの診療報酬請求に対し、いわゆる「減点」の措置を行った。上告人である保険医療機関側は、この減点措置が不当であるとして、その取消しを求める抗告訴訟を提起した。
事件番号: 昭和57(行ツ)174 / 裁判年月日: 昭和59年6月21日 / 結論: 棄却
国民健康保険診療報酬審査委員会が行う国民健康保険法四五条五項の規定による療養取扱機関からの診療報酬請求に対する減点の措置及び国民健康保険法施行規則三〇条の規定による右減点の措置についての再度の考案の結果は、抗告訴訟の対象とならない。
あてはめ
本件における減点措置は、保険医療機関が有する診療報酬請求権その他の権利義務に対して、法律上何ら不利益な効果を直接的に及ぼすものではない。基金による審査結果は、支払額の算定過程における一判断に過ぎず、この措置自体によって直ちに医療機関の公法上の権利が確定したり、義務が課されたりするものではないと解される。したがって、処分性の要件である「直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定すること」を満たさない。
結論
社会保険診療報酬支払基金による診療報酬の減点措置は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
実務上の射程
本判決は、行政処分の概念について「直接的・法律的な権利義務への影響」を重視する伝統的な立場(判例実務上の定義)を維持している。答案上は、特定の公権力的行為が単なる内部的な判断や中間的な準備行為に留まり、相手方の権利義務に直接法的な影響を及ぼさない場合に、処分性を否定する根拠として引用できる。
事件番号: 平成22(行ヒ)124 / 裁判年月日: 平成23年6月14日 / 結論: 破棄自判
市営の老人福祉施設の民間事業者への移管に当たり,その相手方となる事業者の選考のための公募に提案書を提出して応募した者が,市長から,その者を相手方として上記移管の手続を進めることは好ましくないと判断したので提案について決定に至らなかった旨の通知を受けた場合において,上記移管は市と相手方となる事業者との間で契約を締結するこ…