国民健康保険診療報酬審査委員会が行う国民健康保険法四五条五項の規定による療養取扱機関からの診療報酬請求に対する減点の措置及び国民健康保険法施行規則三〇条の規定による右減点の措置についての再度の考案の結果は、抗告訴訟の対象とならない。
国民健康保険診療報酬審査委員会が行う国民健康保険法四五条五項の規定による療養取扱機関からの診療報酬請求に対する減点の措置及び国民健康保険法施行規則三〇条の規定による右減点の措置についての再度の考案の結果と抗告訴訟の対象性の有無
国民健康保険法45条,国民健康保険法87条,国民健康保険法施行規則30条
判旨
国民健康保険診療報酬審査委員会による診療報酬請求の「減点措置」及びこれに対する「再度の考案」の結果は、法律上、療養取扱機関の権利義務に不利益な効果を及ぼすものではないため、抗告訴訟の対象となる行政処分(処分性)を欠く。
問題の所在(論点)
審査委員会が行う診療報酬請求に対する「減点の措置」および、これに対する異議申立て的な性格を持つ「再度の考案」の結果は、行政事件訴訟法上の「処分」または「裁決」に該当するか。
規範
行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為」とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
重要事実
国民健康保険法に基づく療養取扱機関が、国民健康保険診療報酬審査委員会(以下「審査委員会」)に対し診療報酬を請求したところ、審査委員会は法87条に基づき診療報酬を減額する、いわゆる「減点の措置」をとった。これに対し、療養取扱機関が不服を申し立て、同法施行規則30条に基づく「再度の考案」が行われたが、いずれの結果も抗告訴訟の対象になるかどうかが争われた。
あてはめ
審査委員会による「減点の措置」は、療養取扱機関が有する診療報酬請求権そのものやその他の権利義務について、法律上なんら不利益な効果を直接及ぼす性質のものではない。あくまで支払額を算定するための内部的な審査プロセスの一環であり、これによって直接的に請求権の存否や範囲が最終確定されるわけではない。したがって、当該措置およびこれに付随する「再度の考案」の結果についても、国民の権利義務を直接形成・確定する法的効果を伴わない。
結論
本件減点措置は行政処分にあたらず、再度の考案の結果も行政庁の裁決にあたらないため、いずれも抗告訴訟の対象とはならない。
実務上の射程
診療報酬の減額について争う場合は、審査委員会の措置を取り消す抗告訴訟ではなく、保険者(市町村等)を被告として診療報酬の支払を求める公法上の当事者訴訟を提起すべきであるという実務上の指針を示している。処分性の判断における「法律上の不利益効果の有無」の重要性を確認した事例である。
事件番号: 昭和61(行ツ)68 / 裁判年月日: 昭和61年10月17日 / 結論: 棄却
国民健康保険法三七条一項所定の療養取扱機関が被保険者に対して療養の給付として行つた診療行為が同法四〇条の規定による療養の給付に関する準則に適合しない場合には、被保険者はその適合しない診療に係る費用について同法五七条の二所定の高額療養費の支給請求権を有しない。
事件番号: 昭和43(行ツ)114 / 裁判年月日: 昭和45年3月24日 / 結論: 棄却
労働基準法(昭和三一年六月法律第一二六号による改正後)八五条による災害補償に関する行政官庁の審査の結果は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない。