国民健康保険法三七条一項所定の療養取扱機関が被保険者に対して療養の給付として行つた診療行為が同法四〇条の規定による療養の給付に関する準則に適合しない場合には、被保険者はその適合しない診療に係る費用について同法五七条の二所定の高額療養費の支給請求権を有しない。
国民健康保険法三七条一項所定の療養取扱機関が療養の給付としてした診療行為が同法四〇条の規定による準則に適合しない場合と被保険者の高額療養費支給請求権の有無
国民健康保険法36条1項,国民健康保険法36条5項,国民健康保険法40条,国民健康保険法57条の2
判旨
保険者は療養の給付に関する費用の請求に対し、関係法令の準則に適合するか否かの実質的審査権を有する。準則に適合しない診療行為は、国民健康保険法上の「療養の給付」に該当せず、高額療養費の支給対象にもならない。
問題の所在(論点)
保険者は療養の給付に関する費用請求に対し、内容の当否を判断する実質的審査権を有するか。また、準則に適合しない診療行為について、法57条の2所定の「高額療養費」の支給を受け得るか。
規範
国民健康保険法45条等に基づく審査は、療養取扱機関の行った療養の給付が、同法40条の定める準則(療養担当規則等)に適合しているか否かについての実質的審査に及ぶ。客観的に見て右準則に適合しない診療行為は、法所定の「療養の給付」には該当しない。
重要事実
療養取扱機関が被保険者に対して診療を行い、被保険者はその費用の一部を一部負担金として支払った。しかし、保険者は当該診療行為が国民健康保険法40条の準則に適合しないとして、費用の支払いを拒否。これに伴い、被保険者が法57条の2に基づく高額療養費の支給を求めたが、保険者はこれを認めなかったため、その適法性が争われた。
事件番号: 昭和57(行ツ)174 / 裁判年月日: 昭和59年6月21日 / 結論: 棄却
国民健康保険診療報酬審査委員会が行う国民健康保険法四五条五項の規定による療養取扱機関からの診療報酬請求に対する減点の措置及び国民健康保険法施行規則三〇条の規定による右減点の措置についての再度の考案の結果は、抗告訴訟の対象とならない。
あてはめ
国民健康保険制度において、療養取扱機関は保険者との関係で準則適合的な療養を行う責務を負い、被保険者が受け得る診療内容も右準則による制約を受ける。本件における診療行為が客観的にみて右準則に適合しないのであれば、それは法が予定する「療養の給付」そのものに当たらない。したがって、一部負担金を支払っていたとしても、支給要件である「法所定の療養」が存在しない以上、高額療養費の支給余地はないと解される。
結論
保険者は実質的審査権を有し、準則に違反する診療については、高額療養費の支給対象外となる。上告棄却。
実務上の射程
公費助成や社会保険制度における「給付」の概念を画定する際、単に事実として行われた診療ではなく、法令の定める適正な手続・内容(準則)に適合することを要件とする判例。行政法上の裁量権の範囲というよりは、法律上の要件解釈(給付の該当性)の文脈で活用すべきである。
事件番号: 平成26(行ヒ)356 / 裁判年月日: 平成27年11月17日 / 結論: 棄却
1 特許権の存続期間の延長登録出願の理由となった医薬品医療機器等法の規定による医薬品の製造販売の承認に先行して,同一の特許発明につき同法の規定による医薬品の製造販売の承認がされている場合において,延長登録出願に係る特許発明の種類や対象に照らして,医薬品としての実質的同一性に直接関わることとなる審査事項について両承認を比…
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障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(令和4年法律第76号による改正前のもの)20条1項に基づく介護給付費の支給決定に係る申請を却下する処分がされた場合において、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、上記処分が違法であるとした原審の判断には、市町村の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った結果、受けることが…
事件番号: 昭和33(オ)606 / 裁判年月日: 昭和35年11月1日 / 結論: 棄却
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