障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(令和4年法律第76号による改正前のもの)20条1項に基づく介護給付費の支給決定に係る申請を却下する処分がされた場合において、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、上記処分が違法であるとした原審の判断には、市町村の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った結果、受けることができる介護給付のうち自立支援給付に相当するものの量を算定することができないとした市の判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるか否かについて審理を尽くさなかった違法がある。 ⑴ 上記申請をした者は、上記処分当時、両下肢の機能の全廃及び両上肢の機能の著しい障害により、1級の身体障害者手帳の交付を受けていた。 ⑵ 上記の者は、上記処分までに、障害支援区分4の認定を受けた上、障害福祉サービスの種類を居宅介護、支給量を身体介護月45時間及び家事援助月25時間とする支給決定を受けていた。 ⑶ 上記申請は、障害福祉サービスの種類及び支給量について、上記支給決定と同じ内容の支給決定を求めるものであった。 ⑷ 上記の者は、上記処分当時、65歳に達していたが、介護保険法27条1項に基づく申請をしていなかった。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(令和4年法律第76号による改正前のもの)20条1項に基づく介護給付費の支給決定に係る申請を却下する処分が違法であるとした原審の判断に違法があるとされた事例
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成26年法律第83号による改正前のもの)7条、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(令和4年法律第76号による改正前のもの)20条1項、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(令和4年法律第76号による改正前のもの)22条1項、7項、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令(平成27年政令第138号による改正前のもの)2条
判旨
障害者総合支援法に基づく介護給付費の支給要否決定は市町村の合理的な裁量に委ねられ、介護保険優先の原則(同法7条)に基づき、要介護認定申請がなされず受けることができる介護給付の量を算定できないことを理由とする却下処分は、特段の事情がない限り裁量権の逸脱・濫用には当たらない。
問題の所在(論点)
介護保険法に基づく要介護認定申請を行わない申請者に対し、受けることができる介護給付の量が算定できないことを理由に自立支援給付の申請を却下する処分が、市町村の裁量権の逸脱・濫用にあたるか。
規範
介護給付費の支給決定及び支給量の判断は、障害者の心身の状況、置かれている環境、サービスの提供体制等の多岐にわたる事項を総合的に勘案する必要があるため、市町村の合理的な裁量に委ねられる。また、同法7条は要介護認定の有無にかかわらず介護給付を優先する趣旨(介護保険優先の原則)である。したがって、受けることができる介護給付の量を算定できないことを理由とする却下処分は、その判断が事実の基礎を欠くか、又は考慮不尽・不当考慮により社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合に限り、裁量権の逸脱・濫用として違法となる。
重要事実
身体障害1級の被上告人は、市町村民税非課税世帯に属し、障害者総合支援法に基づく居宅介護の支給を受けていた。被上告人が65歳に達する際、上告人(市)は介護保険法に基づく要介護認定申請を勧奨したが、被上告人は利用者負担の発生等を懸念してこれに応じなかった。上告人は、介護保険優先の原則に基づき、介護保険サービスの量が確定せず不足する障害福祉サービスの量を算定できないとして、本件申請を却下した。
あてはめ
居宅介護と介護保険の訪問介護は内容が概ね重なり合うため、被上告人の状況から介護給付を受けられると見込む上告人の判断は不合理ではない。また、介護保険法上、要介護状態区分は同法に基づく調査・判定を経て認定されるものであり、申請がない場合に市町村が独自に調査等を行うことは予定されていない。特定の事業所が利用不可能であるなどの特段の事情がない限り、要介護認定申請を経ずに給付量を算定できないとした判断は、社会通念上著しく妥当性を欠くとはいえない。なお、原審が指摘した世帯間の利用者負担の不均衡は、法令上予定された仕組みであり、これを避ける措置を講じなかったことが直ちに裁量権の逸脱・濫用を基礎付けるものではない。
結論
本件却下処分について、受けることができる介護給付の量を算定できないとした上告人の判断が、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くか否かの審理を尽くさせるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
行政庁の裁量権の審査において「事実の基礎を欠くか」「社会通念に照らし著しく妥当性を欠くか」という裁量審査の枠組み(審査基準)を再確認するとともに、他法(介護保険法)との調整規定(優先原則)がある場合の裁量判断の合理性を論じる際の指針となる。
事件番号: 平成22(行ヒ)124 / 裁判年月日: 平成23年6月14日 / 結論: 破棄自判
市営の老人福祉施設の民間事業者への移管に当たり,その相手方となる事業者の選考のための公募に提案書を提出して応募した者が,市長から,その者を相手方として上記移管の手続を進めることは好ましくないと判断したので提案について決定に至らなかった旨の通知を受けた場合において,上記移管は市と相手方となる事業者との間で契約を締結するこ…
事件番号: 令和6(行ヒ)170 / 裁判年月日: 令和7年6月27日 / 結論: その他
1 平成25年から平成27年にかけて行われた、物価変動率のみを直接の指標として基準生活費を一律に減ずることをその内容に含む、生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)中の生活扶助基準の改定は、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条…
事件番号: 令和5(行ヒ)397 / 裁判年月日: 令和7年6月27日 / 結論: その他
1 平成25年から平成27年にかけて行われた、物価変動率のみを直接の指標として基準生活費を一律に減ずることをその内容に含む、生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)中の生活扶助基準の改定は、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条…