医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの)30条の7の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの)30条の7の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告と抗告訴訟の対象
医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの)30条の7、健康保険法(平成10年法律第109号による改正前のもの)43条ノ3第2項、行政事件訴訟法3条1項、2項
判旨
医療法30条の7に基づく病院開設中止勧告は、これに従わない場合に保険医療機関の指定を受けられないという実質的な不利益を伴うため、行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たる。
問題の所在(論点)
医療法30条の7に基づく病院開設中止勧告について、行政事件訴訟法3条2項の「処分性」が認められるか。
規範
行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(処分性)とは、公権力の主体たる行政庁の行なう行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。形式上は行政指導であっても、後続の行政処分の拒絶等と密接に関連し、相手方にこれに従うことを事実上強制する仕組みが備わっている場合には、実質的にみて国民の権利利益を侵害する法的効果を有するものとして処分性が認められる。
重要事実
上告人は病院開設のため医療法上の許可申請(400床)を行ったが、県知事から地域医療計画の必要病床数に達していることを理由に、医療法30条の7に基づく病院開設中止勧告(本件勧告)を受けた。上告人がこれを拒否したところ、知事は病院開設自体は許可したものの、同時に「勧告に従わない場合は保険医療機関の指定を拒否する」旨を通告した。当時の実務運用および通知によれば、当該勧告に従わない場合は健康保険法上の「著しく不適当なもの」として指定を拒否することとされていた。
あてはめ
医療法上、勧告に従わないこと自体による直接の不利益処分は規定されていない。しかし、健康保険法の規定および運用の実情によれば、本件勧告に従わない場合には「相当程度の確実さをもって」保険医療機関の指定を受けられなくなるという結果をもたらす。国民皆保険制度下の我が国では、保険医療機関の指定を受けずに病院経営を行うことは実際上不可能であり、指定拒否は事実上の開設断念を強いるに等しい。したがって、本件勧告は、病院開設の自由という権利を制限する法的効果を実質的に有するものと評価できる。
結論
本件勧告は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行政処分)に該当する。
実務上の射程
本判決は、後続処分との連動性により事実上の強制力を持つ行政指導に処分性を認めた重要な例である。答案上は、国民皆保険制度という具体的状況を指摘して、保険指定拒否が実質的な「権利制限」に当たることを論証する際に活用すべきである。なお、勧告後に指定拒否処分の取消訴訟で争うことが可能であっても、早期に勧告段階で紛争を解決する必要性があるとして、処分性を肯定している点にも留意が必要である。
事件番号: 平成17(行ヒ)397 / 裁判年月日: 平成20年9月10日 / 結論: 破棄自判
市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。 (補足意見及び意見がある。)
事件番号: 平成14(行ツ)36 / 裁判年月日: 平成17年9月8日 / 結論: 棄却
1 病院の開設が計画されている医療圏における既存の一般病床(病院の病床で精神病床,伝染病床及び結核病床以外のもの)数が医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの)30条の3に基づく県の医療計画所定の必要病床数を超え病院開設の必要を認めないとの理由で,同法30条の7に基づく病院の開設中止の勧告を受けた者が,これに従…