一 土地改良法第八条第四項による書類の縦覧期間が法定の二〇日間に満たなくても、満一〇日間縦覧期間が存した以上、同法第一〇条第一項によつてした知事の土地改良区設立認可は当然無効ではない。 二 知事がした土地改良区設立認可が違法であつても、事業実施の経過に照らし、右認可を取り消すことにより、多数の農地、多数の人について生じた各種の法律関係および事実状態を一挙に覆滅し去るような場合には、行政事件訴訟特例法第一一条によつて請求を棄却することができる。
一 土地改良法第八条第四項による書類の縦覧期間が法定期間に満たなかつた場合の同法第一〇条第一項による土地改良区設立認可の効力。 二 行政事件訴訟特例法第一一条第一項の適用を適法とされた事例。
土地改良法8条,土地改良法10条,行政事件訴訟特例法11条
判旨
行政処分における手続上の瑕疵は、その目的である利害関係人の機会保障を著しく損なうものでない限り、処分の効力を否定すべき重大な瑕疵とはならない。また、多数の利害関係者の法律関係が既に形成されている場合、処分の取消しが公共の福祉に反するとして事情判決をなし得る。
問題の所在(論点)
行政処分の先行手続において、法定の縦覧期間に不足がある等の瑕疵がある場合、当該処分の効力にどのような影響を及ぼすか。また、処分の取消しが多数の利害関係に影響する場合に事情判決(行政事件特例法11条)を適用できるか。
規範
1. 行政処分の前提となる公告・縦覧手続に瑕疵がある場合、その瑕疵が処分の根拠法が意図した利害関係人への機会提供の趣旨を根本から損なう(縦覧の機会を全く与えない等)ものでない限り、当該処分を無効(または取消原因となる重大な瑕疵)とするものではない。2. 違法な行政処分であっても、それを取り消すことにより生じる法律関係・事実状態の覆滅が、著しく公共の福祉に反すると認められる場合には、行政事件特例法11条1項(現行行訴法31条1項)に基づき、請求を棄却することができる。
重要事実
上告人らは、土地改良区の設立認可処分に対し、その前提となる土地改良法8条4項所定の公告・縦覧手続に瑕疵があるとして取消しを求めた。具体的には、(1)公告文の文言に法文の脱落があり不明確であったこと、(2)法が20日以上の縦覧期間を義務付けているにもかかわらず、実際には10日間程度しか確保されていなかったこと、(3)公告中の町名に誤記があったことが判明した。
あてはめ
本件公告は文言に不明確な点があるが、設立申請に伴う審査である旨や書類・期間の記載があり、法の趣旨に照らし有効である。また、縦覧期間が法定の20日に満たず10日間であった点については、法が縦覧を命じた趣旨が「利害関係人に異議申立の機会を与えること」にある点に照らせば、10日間の縦覧が可能であった以上、機会を全く与えない場合と同視できず、認可を無効とするほどの重大な瑕疵とはいえない。さらに、既に土地改良事業が実施され、多数の農地・農家について複雑な法律関係・事実状態が生じている現状では、これらを一挙に覆滅することは著しく公共の福祉に反するため、事情判決による棄却が正当化される。
結論
本件認可処分における手続上の瑕疵は、処分の効力を否定するほど重大なものではない。仮に取消事由があったとしても、事業進捗に伴う現状維持の必要性から、事情判決により取消請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
手続的瑕疵の違法性の程度を判断する際の指標(趣旨に照らした機会保障の有無)として活用できる。また、土地改良事業のような多人数が関与する集団的・大規模プロジェクトにおける事情判決の適用可能性を示す典型例である。答案上では、瑕疵の重大性と、取消しによる公共の福祉への影響を具体的事実に基づき比較衡量する際の論理として用いる。
事件番号: 昭和27(オ)113 / 裁判年月日: 昭和31年3月9日 / 結論: その他
一 訴願権者でない者の提起した訴願を不適法として却下する裁決は、行政事件訴訟特例法第五条第四項にいう訴願の裁決にあたらない。 二 農地売渡計画に対し異議の申立をしないで法定期間経過後、直接、訴願庁に提起された訴願であつても、訴願庁が宥恕すべき事情があると認めてこれを受理し棄却の裁決をした場合には、右裁決は、行政事件訴訟…