医療法(平成12年法律第141号による改正前のもの)30条の7の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う勧告で,開設申請に係る病床数の病院が開設されると医療計画によって定まっている当該区域における必要病床数を超えることを理由として当該病院の病床数を削減することを求めるものは,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。(補足意見がある。)
医療法(平成12年法律第141号による改正前のもの)30条の7の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病床数削減の勧告と抗告訴訟の対象
医療法(平成12年法律第141号による改正前のもの)30条の7,健康保険法(平成11年法律第87号による改正前のもの)43条ノ3第4項2号,行政事件訴訟法3条1項,2項
判旨
医療法上の病床削減勧告は、形式的には行政指導であるが、従わない場合には相当程度の確実さで保険医療機関の指定を受けられなくなるという仕組み上の不利益を伴うため、抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分」に当たる。
問題の所在(論点)
医療法30条の7に基づく病床削減勧告が、行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するか。
規範
行政事件訴訟法3条2項にいう「処分」とは、行政庁の行為のうち、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものを指す。もっとも、形式的には行政指導であっても、他の法制度(保険医療機関の指定等)と連動し、これに従わない場合に「相当程度の確実さ」をもって重大な法的・事実上の不利益をもたらす仕組みとなっている場合には、その実質に鑑み処分性を認めるのが相当である。
重要事実
病院開設を計画するX(上告人)に対し、Y知事(被上告人)は、地域の必要病床数を超えることを理由に、病床数を308床から60床に削減するよう医療法30条の7に基づき勧告した。医療法上、勧告に従わないことによる不利益処分はないが、健康保険法43条ノ3第4項2号は、同勧告に従わない場合に保険医療機関の指定を拒否できる旨を規定している。Xは、勧告は違法であるとしてその取消しを求めて提訴したが、原審は行政指導にすぎないとして訴えを却下した。
あてはめ
第一に、健康保険法の規定によれば、本件勧告に従わない場合には「相当程度の確実さ」をもって、削減勧告された病床を除いてしか保険医療機関の指定を受けられなくなるという結果をもたらす。第二に、我が国の国民皆保険制度下では、保険指定を受けずに病院経営を行うことは実際上不可能であり、指定の制限は「実際上当該病床を設けることができない不利益」に直結する。したがって、医療法上の勧告と健康保険法上の指定拒否の仕組みを併せ考えると、本件勧告は公権力の行使として実質的に相手方の権利を制限する性質を有する。後に指定拒否処分を争い得るとしても、この結論は左右されない。
結論
本件勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう処分に当たる。したがって、却下した原審の判断は誤りであり、本件を差し戻すべきである。
実務上の射程
本判決は、複数の法制度が連結して一定の法的効果を発生させる「仕組み」に着目して処分性を認めた点に特色がある。答案上は、形式的に行政指導であっても、後続の不利益処分と「実質的に一体」といえる場合や、不利益が「相当程度の確実さ」で予測される場合の議論として活用すべきである。
事件番号: 平成17(行ヒ)397 / 裁判年月日: 平成20年9月10日 / 結論: 破棄自判
市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。 (補足意見及び意見がある。)