労働者災害補償保険法上の遺族補償年金の受給権取得前から直系血族又は直系姻族以外の者の事実上の養子であつた者が右受給権取得後養子縁組の届出をして右直系血族又は直系姻族以外の者の法律上の養子となつたときは、同法一六条の四第一項三号所定の「養子となつたとき」にあたり、右受給権は消滅する。
労働者災害補償保険法上の遺族補償年金の受給権取得前から直系血族又は直系姻族以外の者の事実上の養子であつた者が右受給権取得後養子縁組の届出をして右直系血族又は直系姻族以外の者の法律上の養子となつた場合と右受給権の帰すう
労働者災害補償保険法16条の4第1項3号
判旨
労働者災害補償保険法上の遺族補償年金受給権者が、受給権発生前から事実上の養子であった者について、受給権発生後に養子縁組の届出をして法律上の養子となった場合、同法16条の4第1項3号の「養子となったとき」に該当し、受給権は消滅する。
問題の所在(論点)
労働者災害補償保険法16条の4第1項3号は、遺族補償年金の受給権者が「養子(届出をしていないが、事実上養子縁組と同様の関係にある者を含む。)となつたとき」に受給権が消滅すると規定している。受給権発生前から事実上の養子であった者が、受給権発生後に法律上の養子縁組を具備した場合、この「養子となったとき」に該当するか。
規範
労働者災害補償保険法16条の4第1項3号にいう「養子となったとき」とは、原則として養子縁組の届出によって法律上の養子となった時点を指す。受給権発生前に事実上の養子関係があったとしても、受給権発生後に法律上の養子縁組が成立した場合には、同号の失権事由に該当すると解するのが相当である。
重要事実
遺族補償年金の受給権者である者が、当該受給権の発生前から、直系血族または直系姻族以外の者の事実上の養子(いわゆる実態としての養子関係)であった。しかし、受給権が発生した後に、当該養親との間で法律上の養子縁組の届出を行い、法律上の養子となった。これに対し、行政庁側は同法16条の4第1項3号の失権事由に該当するとして受給権の消滅を主張した。
事件番号: 平成12(行ツ)250 / 裁判年月日: 平成14年2月22日 / 結論: 破棄自判
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あてはめ
本件において、受給権者は受給権発生前から事実上の養子状態にあったが、法律上の養子縁組の届出は受給権発生後になされている。同法の趣旨は、養子縁組により新たな扶養関係が形成され、遺族補償の必要性が失われることを失権事由としたものである。事実上の養子関係が先行していたとしても、法律上の養子縁組という新たな身分上の変動が生じた以上、その時点で同法16条の4第1項3号の要件を充足したと評価される。
結論
直系血族または直系姻族以外の者の法律上の養子となったことは、同法16条の4第1項3号所定の「養子となったとき」にあたり、遺族補償年金の受給権は消滅する。
実務上の射程
本判決は、事実上の養子関係が先行している事案であっても、事後的に法律上の縁組がなされれば失権事由に該当することを明確にしたものである。答案作成上は、同条の「養子(事実上の養子を含む)」という文言が、受給権消滅の時点を特定する基準として、形式的な法律上の縁組成立時を重視する趣旨であることを示す際に活用できる。
事件番号: 平成16(行ヒ)332 / 裁判年月日: 平成17年4月21日 / 結論: 棄却
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