私立学校教職員共済法に基づく退職共済年金の受給権者であった男性が死亡した場合において,同男性が法律上の妻と20年以上の長期にわたり別居を続け,その間,両者の間には反復,継続的な交渉はなく,婚姻関係修復の努力もされていないなど両者の婚姻関係は実体を失って修復の余地がないまでに形がい化しており,他方,両者の別居後に同男性と親密な関係となった女性は,同男性と同居して夫婦同然の生活をするようになり,同男性の収入により生計を維持し,最期までその看護をするなど事実上婚姻関係と同様の事情にある者であったという事情の下では,遺族として同法に基づく遺族共済年金の支給を受けるべき配偶者に当たるのは,法律上の妻ではなく,内縁関係にあった女性である。 (反対意見がある。)
私立学校教職員共済法に基づく退職共済年金の受給権者であった男性が死亡した場合に同法に基づく遺族共済年金の支給を受けるべき配偶者に当たるのは法律上の妻ではなく内縁関係にあった女性であるとされた事例
私立学校教職員共済法25条,国家公務員共済組合法2条1項3号,国家公務員共済組合法88条1項4号,民法第4編第2章 婚姻
判旨
法律上の婚姻関係にある配偶者がいても、その婚姻関係が実体を失って修復の余地がないまでに形骸化している場合には、当該配偶者は遺族共済年金を受給できる「配偶者」に当たらず、内縁関係にある者が優先してこれに当たる。
問題の所在(論点)
法律上の配偶者が存在する事案において、重婚的内縁関係にある者は、遺族共済年金の支給対象となる「配偶者」として認められるか。法律上の婚姻関係が「形骸化」しているか否かの判断基準が問題となる。
規範
国家公務員共済組合法2条1項3号(私立学校教職員共済法25条で準用)にいう「配偶者」には、届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。法律上の婚姻関係が存続している場合であっても、当該婚姻関係が実体を失い、かつ修復の余地がないまでに形骸化しているときは、法律上の妻は同号の配偶者に当たらず、重婚的内縁関係にある者が配偶者として保護される。
重要事実
甲と法律上の妻(参加人)は、20年以上の長期にわたり別居を続けていた。その間、反復・継続的な交渉はなく、甲が宿舎料を負担していたほかは互いに生活費の負担もなかった。両者は婚姻関係を修復する努力もせず、10年以上会うこともなかった。甲は参加人に対し、婚姻関係清算の趣旨を含む1000万円を送金していた。一方で、甲は被上告人と約17年間にわたり同居して夫婦同然の生活を送り、甲の収入で生計を維持し、最期まで被上告人が看護した。
あてはめ
甲と参加人の別居期間は20年を超え、その間交渉や経済的依存関係がほぼ断絶していたこと、及び婚姻清算の趣旨を含む金員の支払いがあったことから、婚姻関係は実体を失い修復の余地がない。反対意見が指摘する「扶養手当の受領」や「税法上の配偶者控除」等の対外的な処理は、実態を反映したものではなく、婚姻関係の形骸化を否定するに足りない。これに対し、被上告人は長年甲と同居し、経済的・精神的な共同生活を営んでおり、事実上の婚姻関係にあるといえる。
結論
法律上の妻である参加人は「配偶者」に当たらず、内縁関係にあった被上告人が「配偶者」に該当するため、被上告人に対する遺族共済年金の不支給裁定は違法として取り消されるべきである。
実務上の射程
重婚的内縁関係における遺族年金の受給権を認めたリーディングケースである。答案上は、法律上の婚姻関係の「形骸化」を認定する際、単なる別居だけでなく「期間の長さ」「経済的依存の有無」「修復意思の欠如」を具体的事実から拾う際の指針となる。
事件番号: 平成17(行ヒ)354 / 裁判年月日: 平成19年3月8日 / 結論: 破棄自判
厚生年金保険の被保険者であった叔父と姪との内縁関係が,叔父と先妻との子の養育を主たる動機として形成され,当初から反倫理的,反社会的な側面を有していたものとはいい難く,親戚間では抵抗感なく承認され,地域社会等においても公然と受け容れられ,叔父の死亡まで約42年間にわたり円満かつ安定的に継続したなど判示の事情の下では,近親…
事件番号: 平成6(行ツ)249 / 裁判年月日: 平成7年3月24日 / 結論: 棄却
恩給法七二条一項にいう「配偶者」は、法律上の婚姻関係にある者に限られる。
事件番号: 平成27(行ツ)375 / 裁判年月日: 平成29年3月21日 / 結論: 棄却
地方公務員災害補償法32条1項ただし書及び附則7条の2第2項のうち,死亡した職員の夫について,当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを遺族補償年金の受給の要件としている部分は,憲法14条1項に違反しない。