戸籍上届出のある妻が、夫と事実上婚姻関係を解消することを合意したうえ、夫の死亡に至るまで長期間別居し、夫から事実上の離婚を前提とする養育料等の経済的給付を受け、婚姻関係が実体を失つて形骸化し、かつ、その状態が固定化し、一方、夫が他の女性と事実上の婚姻関係にあつたなど判示のような事情があるときは、右妻は、農林漁業団体職員共済組合法(昭和四六年法律第八五号による改正前のもの)二四条一項にいう配偶者にあたらない。
戸籍上届出のある妻が農林漁業団体職員共済組合法(昭和四六年法律第八五号による改正前のもの)二四条一項にいう配偶者にあたらないとされた事例
農林漁業団体職員共済組合法(昭和46年法律第85号による改正前のもの)24条1項
判旨
共済組合法上の遺族給付を受ける「配偶者」とは、社会通念上夫婦としての共同生活を現実に営んでいた者をいい、婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつその状態が固定化して解消の見込みがない「事実上の離婚状態」にある者はこれに該当しない。
問題の所在(論点)
農林漁業団体職員共済組合法24条1項にいう「配偶者」の意義、および戸籍上の婚姻関係が存続していても「事実上の離婚状態」にある場合に受給権が否定されるか。
規範
共済組合法が定める遺族給付は、組合員の死亡時に家族の生活を保障する社会保障的性格を有する。そのため、受給権者である「配偶者」は組合員の生活実態に即して理解すべきであり、社会通念上夫婦としての共同生活を現実に営んでいた者を指す。したがって、戸籍上の配偶者であっても、①婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、②その状態が固定化して近い将来解消される見込みがないとき(事実上の離婚状態)には、遺族給付を受ける配偶者に該当しない。
重要事実
組合員Dと戸籍上の妻である上告人は、昭和28年以降、Dの不貞等を契機に別居と復縁を繰り返したが、昭和31年11月、将来の離婚を前提とする合意のもと再度別居した。その後、Dは死亡する昭和43年まで約12年間、別の女性Fと同棲し、Fを親族に紹介するなど実質的な夫婦生活を営んだ。一方で、Dは上告人に対し、末子の養育料や恩給の分与を継続していたが、上告人とDの間に性関係はなく、上告人は関係修復の働きかけも拒絶していた。
事件番号: 平成16(行ヒ)332 / 裁判年月日: 平成17年4月21日 / 結論: 棄却
私立学校教職員共済法に基づく退職共済年金の受給権者であった男性が死亡した場合において,同男性が法律上の妻と20年以上の長期にわたり別居を続け,その間,両者の間には反復,継続的な交渉はなく,婚姻関係修復の努力もされていないなど両者の婚姻関係は実体を失って修復の余地がないまでに形がい化しており,他方,両者の別居後に同男性と…
あてはめ
Dと上告人は別居の際、将来の離婚を前提とした協議を行い、Dが上告人に支払っていた金員は事実上の離婚給付としての性格を有していたといえる。また、別居期間が約12年に及び、その間DはFと共同生活を営み、上告人も関係改善の助言を拒絶していたことから、上告人において共同生活を伴う婚姻関係を維持する意思はなかったと解される。以上によれば、Dの死亡時、両者の婚姻関係は実体を失って形骸化し、その状態が固定化していたといえ、①および②の要件を充足する。
結論
上告人とDは「事実上の離婚状態」にあり、上告人は同法24条1項の配偶者に該当しない。したがって、上告人の遺族給付請求を認めない判断は正当である。
実務上の射程
重婚的内縁関係において、戸籍上の配偶者と事実上の配偶者のいずれが優先されるかを判断する基準を示す。社会保障的給付の文脈では、形式的な戸籍の有無よりも、死亡時点における生活実態(扶養関係・共同生活の有無)が重視される。答案では「事実上の離婚状態」の該当性を、別居期間、経済的給付の性質、復縁の意思の有無などの具体的事実から認定する際に用いる。
事件番号: 平成6(行ツ)249 / 裁判年月日: 平成7年3月24日 / 結論: 棄却
恩給法七二条一項にいう「配偶者」は、法律上の婚姻関係にある者に限られる。
事件番号: 平成17(行ヒ)354 / 裁判年月日: 平成19年3月8日 / 結論: 破棄自判
厚生年金保険の被保険者であった叔父と姪との内縁関係が,叔父と先妻との子の養育を主たる動機として形成され,当初から反倫理的,反社会的な側面を有していたものとはいい難く,親戚間では抵抗感なく承認され,地域社会等においても公然と受け容れられ,叔父の死亡まで約42年間にわたり円満かつ安定的に継続したなど判示の事情の下では,近親…