農地法の一部を改正する法律(昭和四五年法律第五六号)附則八項は、憲法二九条に違反しない。
農地法の一部を改正する法律(昭和四五年法律第五六号)附則八項と憲法二九条
憲法29条,農地法の一部を改正する法律(昭和45年法律第56号)附則8項
判旨
固定資産税等の税額が農地の小作料収益を超過する場合であっても、土地の価格騰貴による価値の化体に着目した課税である以上、直ちに憲法29条に違反する不合理なものとはいえない。
問題の所在(論点)
農地法改正法附則8項による小作料の統制が、市街化区域農地に対する宅地並み課税と相まって、小作料を上回る税負担を強いる結果となる場合、憲法29条(財産権)に違反するか。
規範
財産権(憲法29条)に対する制限が合憲とされるためには、その制限が公共の福祉に適合する正当な理由に基づくものであり、かつ、その目的と手段との間に合理的な関連性が認められる必要がある。特に租税法規においては、立法府の専門的・政策的判断が尊重されるべきであり、その内容が著しく不合理であることが明白でない限り、憲法に適合する。
重要事実
上告人は、農地法改正法附則8項(小作料統制を継続する規定)が憲法29条に違反すると主張した。その根拠として、地方税法等の改正により市街化区域農地の固定資産税・都市計画税が類似宅地の価格に比準して課税されることとなった結果、納税額が農地から得られる収益(小作料)を超過し、所有権を侵害しているという事情を挙げた。
あてはめ
市街化区域農地の価格は近年著しく騰貴しており、その値上がり益は当該農地の価値の中に「化体」している。地方税法等の規定は、この化体された価値に着目して新設されたものである。したがって、固定資産税等の税額が、当該農地を賃貸して得られる現実行収益である小作料の額を超過することがあるとしても、土地自体の価値増加を考慮すれば、そのことが直ちに農地所有者の権利を侵害する不合理なものとは解されない。
結論
農地法改正法附則8項は憲法29条に違反しない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
財産権と租税負担の関係において、収益還元価値(フロー)だけでなく、資産価値(ストック)の増加に着目した課税の合理性を認めた点に意義がある。答案では、租税法による財産権制限の合憲性審査や、農地法の公的規制の合理性を論じる際、評価益に対する課税の正当化根拠として引用できる。
事件番号: 昭和25(オ)163 / 裁判年月日: 昭和30年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法29条3項の「正当な補償」とは、必ずしも常に市場価格と合致することを要せず、公共の利益等の諸般の事情を考慮して算定される合理的相当な額をいう。農地改革における買収対価の規定は、当該目的のために合理的な範囲内にある限り、同項に反しない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、上告人が所…
事件番号: 昭和40(オ)404 / 裁判年月日: 昭和43年4月23日 / 結論: 棄却
農地調整法第九条の二および同法施行令第一二条に基づく昭和二一年農林省告示第一四号は、憲法第二九条に違反しない。
事件番号: 平成8(オ)232 / 裁判年月日: 平成13年3月28日 / 結論: 破棄自判
小作地に対していわゆる宅地並み課税がされたことによって固定資産税及び都市計画税の額が増加したことを理由として小作料の増額を請求することはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)