農地調整法第九条の二および同法施行令第一二条に基づく昭和二一年農林省告示第一四号は、憲法第二九条に違反しない。
農地調整法第九条の二、同法施行令第一二条に基づく昭和二一年農林省告示第一四号は憲法第二九条に違反するか
憲法29条,農地調整法9条ノ2,農地調整法施行令12条,昭和21年農林省告示14号
判旨
金納小作料米価を公定価格として定める措置は、農地所有権に対する公共の福祉の見地からの合理的な制限であり、憲法29条に違反しない。財産権の内容を定める統制価格は、必ずしも当時の収益や自由取引価格と一致することを要しない。
問題の所在(論点)
農地調整法等に基づき金納小作料米価を低額な公定価格に制限する措置が、憲法29条(財産権の保障)に違反するか。
規範
財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律で定められる(憲法29条2項)。公共の福祉を増進または維持するために必要な場合には、財産権の使用・収益・処分に制限を加えることが許容される。法律による公定・統制価格の設定は、それが公共の福祉のためになされる限り、必ずしも当時の経済状態における収益や自由取引価格と完全に一致することを要せず、その価格設定が合理的な制限の範囲内であれば同条に違反しない。
重要事実
農地調整法9条の2および同法施行令12条に基づき、農林省告示(昭和21年1月26日農林省告示14号)は金納小作料米価を一石につき75円と定めた。上告人は、この価格が当時の一般物価に比較して著しく低く、地主の財産権を不当に侵害するものであるとして、憲法29条違反を主張した。
あてはめ
農地は自作農創設特別措置法の成立以前から、すでに自由処分や使用目的が制限され、小作料も一定額に据え置かれるなど、市場価格が成立する余地のない特殊な財産であった。戦後の物価上昇に伴う米価改訂は、主に生産費上昇に対応し耕作者を保護するための米価対策としてなされたものであり、生産に直接関与しない地主に対して、農地価格や小作料をこれに連動して改訂しなくても不合理とはいえない。したがって、一石75円という価格設定は、公共の福祉の見地から農地所有権に加えられた合理的な制限であるといえる。
結論
本件告示による小作料米価の公定は、公共の福祉による合理的な制限であり、憲法29条に違反しない。
実務上の射程
財産権の規制(特に価格統制などの経済的自由の規制)に関する憲法29条2項の合憲性判断において、立法府の広範な裁量を認める基準として活用できる。特に農地改革関連の事案において、収益性や市場価格との乖離のみをもって直ちに違憲とはならないことを示す判例である。
事件番号: 昭和24(オ)227 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法29条3項の「正当な補償」とは、被収用財産の客観的な経済価値の補償を意味する。自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、法定の最高価格を基準としつつ、当該物件の特有の事情を考慮して算定された対価は適法である。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法に基づき畑を買収されたが、その買…
事件番号: 昭和25(オ)42 / 裁判年月日: 昭和29年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地改革における買収対価が憲法29条3項の「正当な補償」にあたるか否かが争われ、先行の大法廷判決を維持して合憲と判断された。 第1 事案の概要:戦後の農地改革を推進するために制定された自作農創設特別措置法に基づき、政府が地主の所有する農地を強制的に買収した。上告人(地主側)は、同法6条3項に定める…
事件番号: 昭和25(オ)163 / 裁判年月日: 昭和30年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法29条3項の「正当な補償」とは、必ずしも常に市場価格と合致することを要せず、公共の利益等の諸般の事情を考慮して算定される合理的相当な額をいう。農地改革における買収対価の規定は、当該目的のために合理的な範囲内にある限り、同項に反しない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、上告人が所…