小作地に対していわゆる宅地並み課税がされたことによって固定資産税及び都市計画税の額が増加したことを理由として小作料の増額を請求することはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)
小作地に対する宅地並み課税により固定資産税等の額が増加したことを理由として小作料の増額請求をすることの可否
農地法(平成12年法律第143号による改正前のもの)23条1項,地方税法附則19条の2,地方税法附則19条の3,地方税法附則27条
判旨
市街化区域内の農地に対する「宅地並み課税」による固定資産税等の増加は、農地法23条1項の「経済事情の変動」に該当せず、小作料の増額請求事由にはならない。小作料は通常の農業経営による収益を基準とすべきであり、資産価値の増大に伴う税負担を賃借人に転嫁することは許されない。
問題の所在(論点)
市街化区域内の農地に対する固定資産税等の急増(宅地並み課税)が、農地法23条1項の「その他の経済事情の変動」に含まれ、小作料の増額事由となるか。また、賃借人が生産緑地指定に同意しなかったことが信義則上の義務違反として増額を正当化するか。
規範
農地法23条1項に基づく小作料増額請求が認められるためには、「経済事情の変動」により賃料が不相当となったことが必要である。小作料は、耕作者の地位・農業経営の安定を図る趣旨(同法1条、24条の2第2項等)から、当該農地で通常の農業経営を行った場合の収益を基準として定めるべきである。宅地並み課税は資産価値の騰貴に着目したものであり、その税負担は値上がり益を享受する所有者が維持経費として担うべきものであって、農地としてのみ利用可能な賃借人に転嫁し得る性質のものではない。
重要事実
賃貸人Xは、市街化区域内にある農地を賃借人Yらに貸し付けていた。平成3年の地方税法改正により、当該農地が「宅地並み課税」の対象となり、固定資産税等が大幅に増加し、小作料を上回る「逆ざや現象」が生じた。Xは、農地法23条1項に基づき小作料の増額を請求した。なお、Yらが生産緑地地区の指定(課税緩和)に必要な同意を、将来の離作補償で不利になることを危惧して拒んだため、指定を受けられなかったという経緯があった。
あてはめ
農地法23条1項は、借地借家法と異なり公租公課の増減を明文の事由としていない。宅地並み課税による税負担は、土地を宅地として転用・処分できる所有者が負担すべき資産維持経費であり、収益が農業目的に限定されている小作農に転嫁することは、農業経営の安定を図る法の目的に反する。また、生産緑地指定への同意は各自の生活設計に関わる事項であり、賃借人に同意すべき信義則上の義務があるとはいえない。逆ざやの不利益は、法20条に基づく解約・転用等によって解消されるべき性質のものである。
結論
宅地並み課税による固定資産税等の増加は「経済事情の変動」に該当せず、増額請求は認められない。
実務上の射程
農地法上の小作料増額請求において、公租公課の増大を「経済事情の変動」として構成することに否定的な射程を有する。賃貸借一般における借地借家法32条1項(地代等増減請求権)の解釈とは異なり、農地法特有の「農業収益基準」を重視する場面で活用すべき判例である。
事件番号: 平成3(オ)269 / 裁判年月日: 平成3年11月29日 / 結論: 棄却
借家法七条一項の規定に基づく賃料増額請求権を行使するには、現行の賃料が定められた時から一定の期間を経過していることを要しない。