借家法七条一項の規定に基づく賃料増額請求権を行使するには、現行の賃料が定められた時から一定の期間を経過していることを要しない。
賃料増額請求権の行使と一定期間経過の要否
借家法7条1項
判旨
賃料増額請求が認められるためには、賃料が経済事情の変動等により不相当となったといえれば足り、現行賃料の合意から一定期間が経過していることは必須の要件ではない。
問題の所在(論点)
借地借家法32条1項(旧借家法7条1項)に基づく賃料増額請求において、前回の賃料改定から「相当の期間」が経過していることは、請求が認められるための独立した要件となるか。
規範
借地借家法32条1項(旧借家法7条1項)に基づく賃料増額請求が認められるためには、賃料が公租公課の増減、土地建物価格の変動、近傍同種賃料との比較等により「不相当」となったといえれば足りる。現行賃料の改定から一定期間の経過が必要であるとする見解は同条の趣旨に反し、期間の経過はあくまで賃料が不相当となったか否かを判断する一事情にすぎない。
重要事実
賃貸人(被上告人の被相続人)が、昭和61年10月に賃料を改定した後、約1年半が経過した昭和63年4月に賃料増額の意思表示(本件増額請求)をした。原審は、昭和63年5月時点の相当賃料を53万4700円と認めつつも、賃料改定から2年を経過していないことを理由に同時点での増額請求を否定し、改定から2年経過した同年10月1日に効力が生じると判断した。
あてはめ
賃料増額請求の可否は、諸般の事情により現行賃料が不相当となったか否かによって決せられるべきである。本件において、原審は昭和63年5月の時点で相当賃料が53万4700円である(現行賃料が不相当である)と認定しており、この時点で請求の要件は充足されている。それにもかかわらず、前回の改定から2年を経過していないことのみを理由に請求を否定した原審の判断は、法条の解釈適用を誤ったものである。
結論
賃料増額請求に一定期間の経過は不要であり、賃料が不相当となった時点でその効力は生じる。原判決には違法があるが、上告人(賃借人)のみが上告している本件では、不利益変更禁止の原則により原判決を維持せざるを得ず、上告は棄却される。
実務上の射程
答案上、賃料改定から短期間で再請求がなされた事案において、期間経過を独立の要件とする反論を封じる際に用いる。あくまで「不相当性」の判断要素(不相当といえるための説得力)として期間を考慮すべきであることを論述のポイントとする。
事件番号: 昭和34(オ)1130 / 裁判年月日: 昭和37年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法12条(現借地借家法11条1項)の賃料増額請求において、直近の賃料合意が本来合意されるべき適正額よりも低い暫定的なものであった場合には、合意後短期間であっても諸般の事情を考慮して大幅な増額請求が認められる。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)は昭和22年に本件宅地を賃料坪10円で賃貸した。…
事件番号: 平成25(受)1649 / 裁判年月日: 平成26年9月25日 / 結論: 破棄差戻
借地借家法32条1項の規定に基づく賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟の確定判決の既判力は,原告が特定の期間の賃料額について確認を求めていると認められる特段の事情のない限り,前提である賃料増減請求の効果が生じた時点の賃料額に係る判断について生ずる。 (補足意見がある。)
事件番号: 平成8(オ)232 / 裁判年月日: 平成13年3月28日 / 結論: 破棄自判
小作地に対していわゆる宅地並み課税がされたことによって固定資産税及び都市計画税の額が増加したことを理由として小作料の増額を請求することはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)