自動車の割賦販売契約が自動車の登録後引渡前に買主の割賦代金支払義務の不履行により解除された場合には、割賦販売法六条一号の規定を適用すべきではなく、しかも、登録による自動車の減価相当額の損害は同法三号所定の「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」にあたらないので、登録減価相当額の損害金の賠償請求は認められない。
自動車の割賦販売契約が自動車の登録後引渡前に買主の割賦代金支払義務の不履行により解除された場合と登録による自動車の減価相当額の損害賠償
割賦販売法6条,民法420条
判旨
自動車の割賦販売契約において、登録後かつ引渡前に買主の債務不履行により解除された場合、割賦販売法6条3号が適用される。また、自動車の登録による減価相当額は、同号に規定される「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」には含まれない。
問題の所在(論点)
商品の引渡前に割賦販売契約が解除された場合において、割賦販売法6条のどの規定を適用すべきか。また、自動車の「登録による減価相当額」は、同条3号の「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」に含まれるか。
規範
割賦販売契約が商品の引渡前に解除された場合、損害賠償額の制限については割賦販売法6条1号の類推適用ではなく、同条3号を適用すべきである。また、同号にいう「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」とは、契約の成立や履行準備のために現実に支出された経費を指し、目的物の価値減少分(減価相当額)はこれに含まれない。
重要事実
上告人(割賦販売業者)と被上告人(買主)との間で、自動車の割賦販売契約が締結された。当該自動車については既に登録手続が完了していたが、現物の引渡しが行われる前に、被上告人の割賦代金支払義務の不履行を理由として契約が解除された。上告人は、登録によって自動車の市場価値が低下したとして、登録減価相当額の損害賠償を求めた。
あてはめ
本件では、自動車の登録は完了しているものの引渡しは未了であるため、引渡後の解除を想定する同法6条1号の類推適用は認められず、引渡前の解除に関する同条3号が適用される。同条3号は損害賠償額の上限を画定する規定であるが、「通常要する費用の額」とは契約手続等に要したコストを指す。登録による車両自体の市場価値の低下(減価相当額)は、現実に支出された費用ではなく、目的物の価値の変動にすぎないため、同号所定の費用には当たらないと解される。
結論
本件契約の解除に伴う損害賠償請求において、割賦販売法6条3号が適用され、登録による自動車の減価相当額の賠償請求は認められない。
実務上の射程
割賦販売法6条の損害賠償制限の適用場面を明確化した。引渡前の解除であれば、たとえ登録等の手続が進んでいても3号が適用され、業者側が主張する「価値の低下」という抽象的な損害は、同号の費用として回収できない。答案上は、消費者保護の観点から法定の賠償制限が厳格に解釈される例として引用できる。
事件番号: 昭和36(オ)52 / 裁判年月日: 昭和39年3月3日 / 結論: 棄却
売主の債務不履行のため買主が転買人に支払つたいわゆる解合による賠償額相当の損害は、原判示事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、特別損害であつて、売主の債務不履行との間に民法第四一六条第二項の規定による相当因果関係を欠く。