会社の敷地内ではあるが事業所内ではない、会社の正門と歩道との間の広場であつて、当時一般人が自由に立ち入ることのできた場所において、就業時間外にビラを配布した行為を理由とする徴戒処分は、無効である。
ビラの配布を理由とする懲戒処分が無効とされた事例
労働基準法89条
判旨
就業時間外に企業の敷地内(正門前の広場)で行われたビラ配布が、作業秩序や職場秩序を乱すおそれのない場所である場合には、施設管理権を不当に侵害するものとはいえず、当該行為に対する懲戒処分は無効となる。
問題の所在(論点)
就業時間外に会社敷地内で行われたビラ配布行為が、企業の有する施設管理権を不当に侵害し、懲戒処分の対象となるか。
規範
企業施設内における活動が施設管理権を侵害し懲戒対象となるか否かは、当該活動が就業時間外に行われたか、及び、その場所的状況が作業秩序や職場秩序を乱すおそれのあるものであったかによって判断される。具体的に、一般人が自由に立ち入り可能で、かつ職場秩序を乱す蓋然性が低い場所での活動であれば、施設管理権を不当に侵害するものとは認められない。
重要事実
労働者である被上告人らは、就業時間外に会社敷地内である正門と歩道との間の広場においてビラを配布した。当該広場は、当時一般人が自由に立ち入ることが可能な場所であった。会社側は、このビラ配布行為が施設管理権を侵害し職場秩序を乱すものであるとして、被上告人らに対して懲戒処分を行った。
あてはめ
本件ビラ配布は就業時間外に行われており、業務自体への直接的な支障はない。また、配布場所は事業所内ではなく正門前の広場であり、一般人の出入りが自由であったことから、格別、会社の作業秩序や職場秩序が乱されるおそれはなかったと評価できる。したがって、本件行為は企業の施設管理権を不当に侵害するものとはいえない。
結論
被上告人らによるビラ配布行為は正当であり、施設管理権侵害を理由とする本件懲戒処分は無効である。
実務上の射程
職場外周部(正門前広場等)における平穏なビラ配布についてのリーディングケースである。答案上は、施設管理権と労働者の活動権の調整場面で、場所の性格(一般開放性)や職場秩序への具体的影響の有無を検討する際の指標として用いる。組合活動としての正当性を判断するまでもなく、管理権侵害の不存在により懲戒を無効とした点に特徴がある。
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