労働者の配布したビラの内容が、大部分事実に基づかず、又は事実を誇張歪曲して使用者を非難攻撃し、全体として使用者を中傷誹議するもので、右ビラの配布により労働者の使用者に対する不信感を醸成して企業秩序を乱し、又はそのおそれがあつたときは、右ビラの配布は、就業時間外に職場外において職務遂行に関係なく行われたものであつても、就業規則に定める懲戒事由の一つである「その他特に不都合な行為があつたとき」にあたり、使用者が、これを理由に懲戒として労働者を譴責したことにつき、裁量権の範囲を逸脱したものとは認められない。
労働者が就業時間外に職場外において職務遂行に関係なくビラを配布したことを理由として右労働者を懲戒することが許されるとされた事例
労働基準法89条
判旨
就業時間外かつ職場外での行為であっても、企業の円滑な運営に支障を来すなど企業秩序に関係するものは懲戒の対象となり、事実を歪曲し会社を中傷するビラ配布は懲戒事由に該当する。
問題の所在(論点)
就業時間外かつ職場外(社宅)で行われた、事実を歪曲した会社批判ビラの配布行為について、企業秩序を乱すものとして懲戒を課すことができるか。また、その懲戒処分が裁量権の範囲内か。
規範
労働者は労働契約に基づき企業秩序遵守義務を負う。使用者は企業秩序維持のため懲戒権を有するが、原則として職場内又は職務遂行に関する行為が対象となる。もっとも、職場外・職務外の行為であっても、企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなど企業秩序に関係を有する場合には、例外的に規制の対象となり、懲戒を課すことが許される。
重要事実
上告人は、他の者らと共に就業時間外に会社社宅において、会社を非難攻撃するビラ約350枚を配布した。当該ビラの内容は大部分が事実に反するか、事実を誇張歪曲して会社を中傷誹謗するものであった。会社は、就業規則上の「その他特に不都合な行為があったとき」に該当するとして、最も軽い懲戒処分である譴責を課した。
あてはめ
本件ビラの内容は、事実の歪曲・誇張により会社を誹謗中傷するものであり、配布の結果として労働者の会社に対する不信感を醸成し、企業秩序を乱す具体的なおそれがあったと認められる。このような行為は、職場外・職務外であっても企業の円滑な運営に支障を来すため、就業規則所定の懲戒事由に該当する。また、配布態様や内容の悪質性に照らし、最も軽い譴責処分を選択したことは、懲戒権者の裁量権の範囲内といえる。
結論
上告人によるビラ配布は懲戒事由に該当し、これに対して譴責を課したことは適法である。
実務上の射程
私生活上の非行等、職場外の行為に対する懲戒権の行使が認められる要件として、実務上極めて重要な判例である。「企業秩序に関係を有する」か否かの判断において、企業の円滑な運営への支障の有無を具体的に検討する際の枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和55(オ)617 / 裁判年月日: 昭和58年11月1日 / 結論: 棄却
工場内において従業員が会社の許可を得ないでした特定の政党の機関紙及び選挙法定ビラの配布につき、それが、休憩時間に、休憩室を兼ねている工場食堂において、食事中の従業員数人に一枚ずつ平穏に手渡し、他は食卓上に静かに置くという方法で行われ、配布に要した時間も数分間であつたなど、判示のような事情があるときは、右ビラ配布行為は、…
事件番号: 昭和47(オ)777 / 裁判年月日: 昭和52年12月13日 / 結論: 破棄自判
一、日本電信電話公社の就業規則において禁止されている政治活動とは、人事院規則一四―七所定の政治的目的をもつてされる政治的行為を指すものではなく、社会通念上政治的と認められる活動をいう。 二、日本電信電話公社の職員が勤務時間中に「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と記載したプレートを着用してこれを職場の同僚に訴えか…