労働者は、使用者の行う他の労働者の企業秩序違反事件の調査について、これに協力することがその職責に照らし職務内容となつていると認められる場合でないか、又は調査対象である違反行為の性質・内容右違反行為見聞の機会と職務執行との関連性、より適切な調査方法の有無等諸般の事情から総合的に判断して、右調査に協力することが労務提供義務を履行するうえで必要かつ合理的であると認められる場合でない限り、協力義務を負わない。
使用者の行う企業秩序違反事件の調査と労働者の協力義務
民法623条,労働基準法第2章
判旨
労働者が企業の行う企業秩序違反の調査に協力すべき義務を負うのは、その協力が職務内容となっている場合、または諸般の事情から労務提供義務の履行として必要かつ合理的であると認められる場合に限られる。本件では、調査内容が労働者の職務執行との関連性が薄く、私的な活動状況等の探索を主とするものであったため、調査協力義務違反を理由とする懲戒処分は無効である。
問題の所在(論点)
企業の行う企業秩序違反に関する調査に対し、労働者が回答を拒否したことが、就務規則上の遵守事項に違反する「懲戒事由」に該当するか。すなわち、労働契約上、労働者が当然に調査協力義務を負うか、その範囲が問題となる。
規範
労働者は労働契約に基づき労務提供義務および付随的な企業秩序遵守義務を負うが、企業の一般的支配に服するものではない。調査協力義務の存否は以下の基準による。①当該労働者が指導・監督・秩序維持を職責とし、調査協力が職務内容に含まれる場合は、労務提供義務そのものとして義務を負う。②それ以外の場合、違反行為の性質・内容、当該労働者の見聞機会と職務執行との関連性、より適切な調査方法の有無等を総合判断し、調査協力が労務提供義務を履行する上で「必要かつ合理的」と認められる場合に限り、義務を負う。
重要事実
会社は、従業員Dらが就業時間中に無断離脱して署名活動等を行った疑いについて調査を開始した。その過程で、上告人もハンカチ作成を依頼した事実等が判明したため、会社は上告人に対し事情聴取を実施。しかし上告人は、運動の組織や活動状況、他者への依頼事実等の質問に対し回答を拒否した。会社はこれが就業規則上の命令違反等に当たるとして懲戒譴責処分を行ったが、上告人が処分の無効を訴えた。なお、会社内の苦情処理委員会(労使代表で構成)は協力義務違反を認めていた。
あてはめ
上告人は指導・監督を職責とする者ではなく、調査協力が当然の職務内容であったとは認められない。次に、具体的な質問内容は、Dが上告人の職務を妨害したか等の職務関連事項ではなく、上告人らが参加する政治運動(原水爆禁止運動)の組織や活動状況を探索するものであった。また、ハンカチ作成依頼の事実について会社は既に了知しており、重ねて上告人に尋ねる必要性も乏しかった。したがって、本件調査への協力が、上告人の労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であったとは認められず、協力義務は発生しない。
結論
上告人に本件調査への協力義務はなく、義務違反を前提とした本件懲戒処分は客観的合理的な理由を欠き、違法無効である。
実務上の射程
労働者のプライバシーや思想信条の自由に関わる事項についての調査協力義務を限定的に解釈する。また、労使合意に基づく苦情処理手続の判断についても、裁判所は懲戒事由の存否を独自に判断すべきであり、当然に尊重・拘束されるものではないことを示した点でも重要である。
事件番号: 昭和53(オ)828 / 裁判年月日: 昭和56年4月9日 / 結論: 棄却
日本専売公社職員に対し公共企業体等労働関係法一七条一項の規定を適用することは、憲法二八条に違反しない。 (補足意見がある。)
事件番号: 昭和47(オ)777 / 裁判年月日: 昭和52年12月13日 / 結論: 破棄自判
一、日本電信電話公社の就業規則において禁止されている政治活動とは、人事院規則一四―七所定の政治的目的をもつてされる政治的行為を指すものではなく、社会通念上政治的と認められる活動をいう。 二、日本電信電話公社の職員が勤務時間中に「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と記載したプレートを着用してこれを職場の同僚に訴えか…