日本電信電話公社(昭和五九年法律第八五号日本電信電話株式会社法附則一一条による廃止前の日本電信電話公社法に基づき設立されたもの)が健康管理上の措置が必要であると認められる職員に対し二週間の入院を要する頸肩腕症候群総合精密検診の受診を命ずる業務命令を発した場合において、右職員に労働契約上その健康回復を目的とする健康管理従事者の指示に従う義務があり、右検診が疾病の治癒回復という目的との関係で合理性ないし相当性を有するなど判示の事情があるときは、右業務命令は有効であり、これに違反したことを理由とする戒告処分は適法である。
日本電信電話公社(昭和五九年法律第八五号日本電信電話株式会社法附則一一条による廃止前の日本電信電話公社法に基づき設立されたもの)がその職員に対し頸肩腕症候群総合精密検診の受診を命じた業務命令が有効であるとしてこれに違反したことを理由とする戒告処分が適法であるとされた事例
日本電信電話公社法(昭和59年法律第85号日本電信電話株式会社法附則11条による廃止前のもの)33条,労働基準法89条,労働基準法93条
判旨
労働者は就業規則等の規定が合理的である限り、労働契約上の義務として、合理性と相当性が認められる範囲内で健康回復を目的とした精密検診を受診する義務を負う。本件では、長期間症状が改善しない職員に対する総合精密検診の受診命令は有効であり、これへの拒否は懲戒事由に該当する。
問題の所在(論点)
就業規則等の規定に基づき、使用者が労働者に対して特定の医療機関での精密検診受診を業務命令として強制できるか。また、その受診拒否を理由とする懲戒処分の可否が問題となる。
規範
使用者の業務命令権の根拠は労働契約にある。就業規則が一定の事項につき業務命令に服すべき旨を定めている場合、その規定内容が合理的である限り、当該事項は労働契約の内容となる。安全衛生に関し、職員に精密検診受診義務等を課す規定が合理的ならば、労働者は、検診の内容・方法に合理性ないし相当性が認められる限度で受診義務を負う。これは個人の診療の自由や医師選択の自由を不当に侵害するものではない。
重要事実
日本電信電話公社の職員Xは、頸肩腕症候群に罹患し「要管理者」として療養や勤務軽減を受けていたが、数年間症状が改善しなかった。公社は労働組合と協力し、長期罹患者の早期回復を目的とした2週間の入院を含む総合精密検診(Q病院での多角的診察)を計画した。公社の就業規則等には職員の健康回復努力義務や指示遵守義務が規定されていた。公社はXに受診を命じたが、Xは「病院が信頼できない」等の理由でこれを拒否した。公社はこれを受診拒否および職場離脱を理由に戒告処分とした。
あてはめ
まず、公社の就業規則等は職員に健康保持義務や指示遵守義務を課しており、労働契約の性質上合理的である。次に、本件検診は長期未治癒の疾病原因を究明する目的があり、多科による総合的検診や入院の必要性も医学的に合理性が認められる。また、実施機関のQ病院は公社の医療機関として職員の疾病実態に精通しており、選定も妥当である。Xは長年症状が改善せず本来の職務に復帰できていない以上、高度な医学的方策に従うべき状況にあり、本件受診命令は合理性と相当性を備えている。したがって、Xには労働契約上の受診義務が認められる。
結論
本件業務命令は有効であり、これに拒否したXの行為は就業規則所定の懲戒事由に該当する。職場離脱の事実と併せれば、本件戒告処分は裁量権の範囲内であり適法である。
実務上の射程
労働者のプライバシーや身体の自由に関わる受診命令が、労働契約上の義務となり得る限界を示した。答案上は、まず就業規則等の根拠規定の合理性を確認し、次に具体的命令の「目的の正当性」「手段の合理性・相当性」を検討する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和47(オ)777 / 裁判年月日: 昭和52年12月13日 / 結論: 破棄自判
一、日本電信電話公社の就業規則において禁止されている政治活動とは、人事院規則一四―七所定の政治的目的をもつてされる政治的行為を指すものではなく、社会通念上政治的と認められる活動をいう。 二、日本電信電話公社の職員が勤務時間中に「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と記載したプレートを着用してこれを職場の同僚に訴えか…
事件番号: 平成26(受)1310 / 裁判年月日: 平成27年2月26日 / 結論: 破棄自判
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