受刑者は、直接憲法二五条一項の規定に基づいて、国に対し、刑務作業につき相当の対価を請求できるものではない。
憲法二五条一項と刑務作業について相当の対価を請求する権利
憲法25条1項,監獄法27条2項,監獄法27条3項
判旨
憲法25条1項は、国家に対し国民一般の生活を保障すべき国政上の任務を課したものであり、個々の国民に対して具体的・現実的な権利を直接付与するものではない。したがって、同条を根拠として直接に刑務作業の対価を請求することはできない。
問題の所在(論点)
憲法25条1項を根拠として、個々の国民が国家に対し、直接に具体的・現実的な権利(本件では刑務作業に対する相当の対価の支払い)を請求し得るか。
規範
憲法25条1項の趣旨は、国家が国民一般に対して概括的に健康で文化的な最低限度の生活を営ませる責務を負担し、これを国政上の任務とすべきことを宣言したものである。同規定により、個々の国民が国家に対して直接に具体的・現実的な権利を有するものではない。
重要事実
刑務所に収容されていた上告人が、刑務作業に従事したことに対し、憲法25条1項に基づき、国(被上告人)に対して相当の対価(作業報奨金等)の支払いを直接求めて提訴した事案である。原審は、憲法25条に基づき直接に対価を請求することはできないと判断したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
憲法25条1項は国政上の指針を示すプログラム規定としての性格を有するに留まり、具体的な権利行使には法律の制定を待つ必要がある。上告人は憲法25条に基づき直接に刑務作業の対価を請求しているが、同条自体からはそのような具体的請求権は発生しない。したがって、原審が上告人の請求を認めなかった判断は正当であるといえる。
結論
憲法25条1項に基づき直接に対価を請求することはできない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
生存権の法的性格(プログラム規定説・抽象的権利説)を論じる際の最重要判例の一つ。答案上は、憲法25条の裁判規範としての限界を示す際に引用する。特に、立法措置を介さない直接の権利行使(金銭請求等)の場面では、本判決を引いて否定的な論理を展開するのが通例である。
事件番号: 昭和25(オ)16 / 裁判年月日: 昭和25年10月24日 / 結論: 棄却
戦時補償特別税の納税義務者が何人であつても、戦時補償特別措置法第一四条の申告書が、何人からも提出されなかつた場合に、銀行が、特殊預金の全額について戦時補償特別税を徴収し、国に納付しても、国が不当に利得したものとはいえない。
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事件番号: 昭和35(オ)115 / 裁判年月日: 昭和37年11月1日 / 結論: 棄却
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