共同相続人の一人が遺産を構成する特定の不動産について同人の有する共有持分権を第三者に譲渡した場合に、民法九〇五条の規定を適用又は類推適用することはできない。
共同相続人の一人が遺産たる特定不動産に対する共有持分権を譲渡した場合と民法九〇五条の適用又は類推適用の可否
民法905条
判旨
共同相続人の一人が遺産に属する特定不動産の共有持分を第三者に譲渡した場合、民法905条の取戻権の規定は適用されない。また、共有物分割の訴えにおいて、分割対象財産に共有持分を有しない者や、既に持分を全て譲渡した者は当事者適格を有しない。
問題の所在(論点)
1. 遺産構成財産の特定不動産の持分譲渡に民法905条が適用されるか。 2. 共有物分割の訴えにおいて、対象土地に持分を有しない者や、持分を譲渡済みの者に当事者適格が認められるか。
規範
1. 共同相続人の一人が遺産中の特定不動産の共有持分を譲渡した場合、民法905条1項(相続分の取戻権)の規定を適用または類推適用することはできない。 2. 共有物分割の訴え(民法258条)において、当事者適格を有するのは当該不動産の共有者に限られる。共有持分権を有しない者や、譲渡により持分を失った者は原告または被告としての適格を欠く。
重要事実
Dの遺産である複数の土地につき、共同相続人の一人である上告人Aが、その共有持分(6分の2)を訴外Eに売却し、Eはさらに被上告人にその持分の半分(6分の1)を転売した。ただし、この売買の目的物は遺産に含まれる土地全部ではなく「本件係争地」のみであった。被上告人は、上告人ら(Aを含む)に対し、遺産分割前に共有物分割の訴えを提起し、本件係争地の単独所有権取得と持分移転登記を求めた。これに対し上告人らは相続分の取戻権を主張し、また分割対象や当事者適格が争点となった。
あてはめ
1. 民法905条は「相続分」自体の譲渡を対象とするものであり、個別の不動産上の共有持分譲渡には適用されないと解するのが相当である。 2. 被上告人が買い受けたのは本件係争地の持分のみであり、その他の土地については持分を有しないため、当該土地に関する分割請求の当事者適格を欠く。 3. 上告人Aは、本件係争地の持分を既に全て譲渡しており、もはや共有者ではない。したがって、共有関係の解消を目的とする共有物分割の訴えにおいて、被告としての当事者適格を欠くといえる。
結論
相続分の取戻権の主張は認められない。また、被上告人が持分を持たない土地部分、および持分を全て譲渡した上告人Aに対する関係では、共有物分割の訴えは当事者適格を欠き不適法である。
実務上の射程
遺産分割前の遺産共有状態において、特定不動産の持分が第三者に譲渡された場合の法的処理を示す。実務上、遺産共有と通常共有の性質が併存する場面でも、民法905条の「相続分」を厳格に捉える判例法理として活用される。また、共有物分割の訴えが固有必要的共同訴訟である性質上、譲渡人・譲受人の入れ替わりによる適格喪失に注意を促す射程を持つ。
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