共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は、遺産分割審判ではなく、共有物分割訴訟である。
共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が共有関係解消のためにとるべき裁判手続
民法258条1項,民法907条2項
判旨
共同相続人の一人から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者は、他の共同相続人との共有関係を解消する方法として、遺産分割審判ではなく共有物分割訴訟(民法258条)を提起すべきである。
問題の所在(論点)
遺産分割協議が完了する前に、共同相続人の一人から遺産を構成する特定不動産の持分を取得した第三者が、他の共同相続人に対して共有物分割訴訟(民法258条)を提起することの可否。
規範
共同相続人が遺産を共同所有する法律関係は、基本的には民法249条以下の共有の性質を有する。遺産中の特定不動産の持分が第三者に譲渡された場合、当該譲渡部分は遺産の対象から逸出し、譲受人は相続人ではない。遺産分割審判は相続人等の身分関係にある者の申立てにより遺産全部を対象に合目的的な分割を行うものであるのに対し、共有物分割訴訟は特定の不動産に限定して分割を行うものである。したがって、第三者と相続人との間の共同所有関係の解消には、共有物分割訴訟を用いるべきである。
重要事実
亡Fまたは亡Gの遺産である本件土地建物につき、被上告人と訴外Eが各2分の1の持分で相続したが、遺産分割協議は未了であった。その後、D(上告人らの訴訟被承継人)がEからその共有持分を贈与により取得した。Dは、被上告人に対し、共有権の確認および民法258条に基づく共有物分割を求めて提訴した。
あてはめ
Dは相続人ではなく持分を譲り受けた第三者であり、その取得した持分は遺産分割の対象から逸出している。遺産分割審判の手続に第三者を関与させることは、本来の遺産分割の本旨(遺産全体の総合的把握)に反し、当事者双方に過大な負担を強いる。一方で、共有物分割訴訟であれば、対象を当該不動産に限定できるため第三者の目的に適う。また、分割判決で他の共同相続人に分与された部分は依然として遺産分割の対象となるため、相続人間の遺産分割権を害することもない。
結論
共同相続人の一人から特定不動産の持分を譲り受けた第三者が、他の共同相続人を相手に共有物分割訴訟を提起することは許される。
実務上の射程
遺産分割前の持分譲渡があった場合の紛争解決手段を画定した重要判例である。答案上は、遺産共有の性質(民法249条以下の共有説)の根拠として示しつつ、譲受人が絡む場合の管轄・手続(訴訟か審判か)を判断する基準として活用する。なお、相続人自身が持分を第三者に譲渡せず、相続人同士で特定の不動産のみの分割を求める場合は、原則として依然として遺産分割審判の手続によらなければならない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和52(オ)1171 / 裁判年月日: 昭和53年7月13日 / 結論: その他
共同相続人の一人が遺産を構成する特定の不動産について同人の有する共有持分権を第三者に譲渡した場合に、民法九〇五条の規定を適用又は類推適用することはできない。