土地賃貸借の終了を原因として原状回復義務の履行を求める訴訟において、地上建物の所有権の帰属いかんは、被告の右建物の収去による該土地の明渡義務を定めるについて影響を及ぼすものではない。
借地契約の終了に伴う土地返還請求訴訟と地上建物の所有権の帰属
民法616条,民法597条
判旨
土地賃貸借契約の終了に基づく原状回復としての建物収去土地明渡請求において、土地借主が地上建物の所有権を失ったとしても、特段の事情がない限り、借主は土地明渡義務を免れず、建物の所有権の帰属は明渡義務の発生に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
土地賃貸借契約の終了を原因とする原状回復義務としての建物収去土地明渡請求において、被告(借主)が地上建物の所有権を有していないことが、土地明渡義務の存否に影響を及ぼすか。
規範
土地賃貸借契約の終了に伴う原状回復義務として土地明渡を求める場合、借主は土地を賃借前の状態に戻して返還する義務を負う。この義務は契約上の債務履行として構成されるため、地上建物の所有権が借主から第三者に移転していたとしても、原則として土地借主は建物収去土地明渡義務を免れない。
重要事実
被上告人(賃貸人)は、上告人ら(賃借人)との間の土地賃貸借契約が終了したことを理由に、本件土地上にある建物を収去して土地を明け渡すよう求めた。これに対し、上告人らは本件建物の所有権の帰属について争い、自身に所有権がないことを理由に義務を免れようとした。
あてはめ
本件訴訟は、賃貸借契約の終了を原因とする原状回復義務の履行を求めるものである。契約当事者間の義務履行が問題となっている以上、契約終了に伴い借主が負担する土地返還義務(原状回復としての建物収去義務)は契約上の地位に基づくものである。したがって、建物が誰に属するかという物権的な帰属の問題は、借主が負うべき契約上の義務の履行を妨げるものではなく、明渡義務の判断を左右しない。
結論
上告人らが建物の所有権を有しているか否かにかかわらず、賃貸借契約の終了に伴う建物収去土地明渡義務を負う。したがって、原判決の結論に影響はなく、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
契約当事者間での明渡請求(債権的請求)の場合の射程である。所有権に基づく請求(物権的請求)の場合は、原則として建物所有者を相手方とする必要がある(最判昭35・6・17参照)が、本判決のように契約関係を基礎とする場合は、建物所有権の有無は問われない。答案では、請求の根拠が「契約」か「物権」かを区別して、本判決を引用する必要がある。
事件番号: 昭和46(オ)659 / 裁判年月日: 昭和47年7月18日 / 結論: 破棄差戻
借地上の建物の所有権が第三者に移転する場合には、任意譲渡であると競売等国家機関の介入による場合であるとを問わず、特別の事情がないかぎり、その敷地の借地権は、建物の所有権とともに当然に第三者に移転するものと解すべく、右特別の事情の存することの主張立証責任はこれを自己の利益に援用する者の側にあるものというべきである。
事件番号: 昭和49(オ)1052 / 裁判年月日: 昭和50年7月11日 / 結論: 棄却
土地及びその地上の未登記建物の所有者が建物の取得原因である譲受につき所有権移転登記を経由しないまま土地に対し抵当権を設定した場合においても、法定地上権の成立を妨げない。
事件番号: 昭和43(オ)1345 / 裁判年月日: 昭和44年6月19日 / 結論: 棄却
建物保護に関する法律一条二項(昭和四一年法律第九三号による削除前のもの)は、建物の朽廃以外の滅失の場合にも適用がある。
事件番号: 昭和44(オ)1215 / 裁判年月日: 昭和47年12月7日 / 結論: その他
建物の登記簿上の所有名義人にすぎない者は、たとえ、所有者との合意により名義人となつた場合でも、建物の敷地所有者に対して建物収去義務を負わないと解すべきである。