国税徴収法三九条にいう「受けた利益の限度」の算定にあたつては、当該受益財産の取得により課される道府県民税及び市町村民税の額は、これを右受益財産の価額から控除すべきものではない。
国税徴収法三九条にいう「受けた利益の限度」の算定と当該受益財産の取得により課される道府県民税額及び市町村民税額控除の要否
国税徴収法39条
判旨
国税徴収法39条の「受けた利益の限度」は受益の時を基準に算定すべきであり、受益財産取得に伴い課される住民税額は、受益時に法律上客観的に確定していないため、当該利益額から控除できない。
問題の所在(論点)
無償譲渡等の処分取消しに伴う第二次納税義務(国税徴収法39条)において、限度額の算定基準となる「受けた利益」から、受益財産の取得により課される住民税額を控除できるか。特に、受益後に確定した公租公課が「受益の時において確定している出捐」といえるかが問題となる。
規範
国税徴収法39条にいう「受けた利益の限度」の額は、当該受益の時を基準として算定すべきである。したがって、算定にあたり受益財産の価額から控除すべき出捐は、当該受益の時において、その存否および数額が法律上客観的に確定しているものであることを要する。
重要事実
上告人(特殊関係者)は、滞納者から財産の譲渡等(受益)を受けた。この受益財産の取得に付随して、後に道府県民税および市町村民税(住民税)の税額が確定し、上告人はこれを納付した。上告人は、国税徴収法39条に基づく第二次納税義務の限度額を算定する際、この納付した住民税額を受益財産の価額から控除すべきであると主張して争った。
事件番号: 平成26(行ヒ)71 / 裁判年月日: 平成27年11月6日 / 結論: 棄却
地方税法11条の8にいう「滞納者の地方団体の徴収金につき滞納処分をしてもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合」とは,第二次納税義務に係る納付告知時の現況において,本来の納税義務者の財産で滞納処分(交付要求及び参加差押えを含む。)により徴収することのできるものの価額が,同人に対する地方団体の徴収金の総額に満たな…
あてはめ
住民税は、当該財産の取得による所得のみならず、その年中に生じた他の所得や損失等との関連において課税標準および税額が異動する性質を有する。そのため、受益の時点においては、納税義務の存否および数額を法律上客観的に確定することは不可能である。したがって、たとえ事後的に税額が確定し納付されたとしても、それは受益時において確定した出捐とは認められない。滞納国税の徴収確保という制度趣旨に照らせば、このように解しても特殊関係者に不合理な負担を強いるものとはいえない。
結論
受益財産の取得により課される住民税額は、「受けた利益の限度」の算定にあたり、受益財産の価額から控除することはできない。
実務上の射程
第二次納税義務の限度額算定における「受益時評価原則」を明確にした判例である。答案上は、受益後の事情(価格下落や公租公課の確定)が限度額に影響しないことを論理づける際に、本判決の「法律上客観的に確定していること」という要件を引用して、事情の切捨てを行う論拠として活用する。
事件番号: 昭和48(行ツ)112 / 裁判年月日: 昭和50年8月27日 / 結論: 棄却
第二次納税義務の納付告知を受けた者は、本来の納税義務者の納税義務を確定した課税処分等が不存在又は無効でないかぎり、右納付告知の取消訴訟において、本来の納税義務者の納税義務の存否又は数額を争うことはできない。
事件番号: 平成6(行ツ)7 / 裁判年月日: 平成6年12月6日 / 結論: 棄却
国税徴収法の定める第二次納税義務の納付告知には、国税の更正、決定等の期間制限に関する国税通則法七〇条は類推適用されない。
事件番号: 平成10(行ツ)149 / 裁判年月日: 平成15年12月19日 / 結論: 棄却
いわゆる一括支払システムに関する契約において譲渡担保権者と納税者との間でされた国税徴収法24条2項による告知書の発出の時点で譲渡担保権を実行することを内容とする合意は,同条5項の趣旨に反して無効である。 (補足意見がある。)
事件番号: 平成26(行ヒ)167 / 裁判年月日: 平成27年10月8日 / 結論: 破棄差戻
権利能力のない社団の理事長及び専務理事の地位にあった者が当該社団から借入金債務の免除を受けることにより得た利益は,① 同人が当該社団から長年にわたり多額の金員を繰り返し借り入れていたところ,当該社団がこのような貸付けを行ったのは同人が上記の地位にある者としてその職務を行っていたことによるものとみるのが相当であること,②…