いわゆる一括支払システムに関する契約において譲渡担保権者と納税者との間でされた国税徴収法24条2項による告知書の発出の時点で譲渡担保権を実行することを内容とする合意は,同条5項の趣旨に反して無効である。 (補足意見がある。)
いわゆる一括支払システムに関する契約においてされた国税徴収法24条2項による告知書の発出の時点で譲渡担保権を実行することを内容とする合意の効力
国税徴収法24条,民法91条
判旨
国税徴収法24条2項の告知の「発出」を停止条件とする譲渡担保権の実行(代物弁済)合意は、同条5項の潜脱を目的とするものであり、その効力は認められない。
問題の所在(論点)
国税徴収法24条2項の告知が「到達」する前に、告知の「発出」を条件として譲渡担保権を実行する代物弁済合意(本件合意)の効力が認められるか。同条5項の「告知をした後」の解釈と、脱法的な合意の成否が問題となる。
規範
国税徴収法24条5項にいう「告知をした後」とは、告知書が譲渡担保権者に到達した時点以後を指す。もっとも、告知の発出と到達との間の時間的間隔を利用し、告知の発出を条件として譲渡担保権を実行する旨をあらかじめ合意することは、同条2項の手続を契機とした財産逸出を防止する同条5項の趣旨を回避するものであるから、当該合意の効力は認められない。
重要事実
銀行(上告人)は取引会社(納税者)との間で一括支払システムに関する契約を締結し、売掛金債権を担保目的で譲り受けた。当該契約には、国税徴収法24条に基づく告知が「発せられたとき」は当座貸越債権の弁済期が到来し、担保債権を当然に代物弁済に充てる旨の条項(本件合意)が含まれていた。税務署長が上告人に対し、同条2項に基づき上記債権から国税を徴収する旨の告知書を発出し、同日到達したため、上告人が告知の取消しを求めて提訴した。
事件番号: 平成26(行ヒ)71 / 裁判年月日: 平成27年11月6日 / 結論: 棄却
地方税法11条の8にいう「滞納者の地方団体の徴収金につき滞納処分をしてもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合」とは,第二次納税義務に係る納付告知時の現況において,本来の納税義務者の財産で滞納処分(交付要求及び参加差押えを含む。)により徴収することのできるものの価額が,同人に対する地方団体の徴収金の総額に満たな…
あてはめ
本件合意は、税務署長が告知書を「発出した時点」で、本来の到達を待たずに担保債権を代物弁済に充てることで、債権を消滅させる内容である。これは、告知の手続が執られたことを契機として譲渡担保権を実行し、同条5項(告知後の債権消滅を無視して滞納処分を可能とする規定)の適用を意図的に回避しようとするものといえる。このような潜脱的な合意は、譲渡担保財産からの徴収を確保しようとする法の趣旨に反し、その効力を認めることはできない。
結論
本件合意は無効であり、譲渡担保財産はなお存続するものとみなされる。したがって、本件告知は適法であり、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
譲渡担保財産に対する滞納処分(国税徴収法24条)の場面において、告知の前後を問わず、徴収回避を目的とした「特約による権利実行」の効力を否定する射程を持つ。答案上は、租税徴収の確保という公益的要請と、私的自治(契約自由の原則)の限界を論ずる際の規範として活用できる。
事件番号: 平成6(行ツ)7 / 裁判年月日: 平成6年12月6日 / 結論: 棄却
国税徴収法の定める第二次納税義務の納付告知には、国税の更正、決定等の期間制限に関する国税通則法七〇条は類推適用されない。
事件番号: 平成29(行ヒ)209 / 裁判年月日: 平成30年9月25日 / 結論: 棄却
給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について,法定納期限が経過したという一事をもって,当該源泉所得税の納付義務を成立させる支払の原因となる行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことが許されないとはいえない。