競売法二七条二項に基づく競売期日の通知は発せられたが到達しなかつた利害関係人が競売手続に参加する機会を失つたことにより被る不利益は、憲法三二条所定の裁判を受ける権利の侵害とはなんらの関係がない。
競売法二七条二項と憲法三二条
憲法32条,競売法27条2項
判旨
憲法32条の裁判を受ける権利は、性質上固有の司法作用の対象となるべき「純然たる訴訟事件」につき裁判所の判断を求める権利を指す。そのため、競売法上の通知が到達せず手続参加の機会を失う不利益は、同条の問題とはならない。
問題の所在(論点)
競売手続における期日通知の不到達によって利害関係人が手続参加の機会を失うことが、憲法32条の「裁判を受ける権利」を侵害するか。また、同条の保障対象となる「裁判」の範囲が問題となる。
規範
憲法32条が保障する裁判を受ける権利とは、性質上固有の司法作用の対象となるべき事項(いわゆる純然たる訴訟事件)につき、裁判所の判断を求めることができる権利をいう。
重要事実
抗告人は、競売法27条2項(当時)が利害関係人に対する競売期日の通知を発信主義(発することで足りる)としている点について、通知が現実に到達しなかった利害関係人が手続参加の機会を奪われる不利益を被ることから、憲法32条に違反すると主張して特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和51(ク)109 / 裁判年月日: 昭和52年1月27日 / 結論: 却下
競売の利害関係人が外国に在るときは同人に対して競売期日の通知を要しないとした競売法二七条三項により生ずる利害関係人の不利益は憲法三二条の裁判を受ける権利とは関係がない。
あてはめ
憲法32条の保障対象は「純然たる訴訟事件」に限られるところ、競売手続における利害関係人の参加機会の喪失という不利益は、右「純然たる訴訟事件」について裁判所の判断を求める権利とは何ら関係がない。したがって、発信主義を採用することで現実の通知が遅滞・不到達となったとしても、裁判を受ける権利を侵害する余地はない。
結論
本件抗告は憲法32条違反の主張の前提を欠き、実質的な法令違背の主張にすぎないため、民事訴訟法(当時)所定の抗告理由にあたらず、不適法として却下される。
実務上の射程
裁判を受ける権利の対象を「純然たる訴訟事件」に限定する判例法理を再確認したものである。非訟事件や執行手続等の付随的事項における手続的保障の限界を論じる際、憲法32条の射程を画定する基準として引用できる。
事件番号: 昭和52(ク)331 / 裁判年月日: 昭和52年11月14日 / 結論: 却下
競売法二七条四項は任意競売手続における利害関係人の範囲を定めた規定であつて、憲法三二条所定の裁判を受ける権利があるかどうかとはなんら関係がない。
事件番号: 昭和32(ク)165 / 裁判年月日: 昭和32年9月9日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特別に認められた場合に限られ、民事事件においては憲法違反を理由とする特別抗告のみがこれに該当する。また、違憲の主張であっても、その実態が単なる法令違反の主張に帰着する場合や、原審の判断に基づかない仮定の事実を前提とする場合は、不適法として却下され…
事件番号: 昭和26(ク)172 / 裁判年月日: 昭和26年9月29日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては、原決定の憲法判断の不当を理由とする場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して最高裁判所に抗告を申し立てた事案。抗告人が主張した抗告理由は、憲法適合性に関する判断を不当とするものでは…
事件番号: 昭和31(ク)253 / 裁判年月日: 昭和31年10月25日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への抗告が認められるのは法律が特に許容する場合に限られ、憲法違反を理由とする場合であっても、原審が認定していない事実を前提とする主張は、適法な違憲の主張とはいえず不適法である。 第1 事案の概要:本件において抗告人は、競売手続における執行吏の行為が憲法に違反する旨を主張して抗告した。しか…