宅地賃貸借契約の法定更新に際し、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習又は事実たる慣習は存在しない。
宅地賃貸借契約の法定更新に際し賃借人が賃貸人に対し更新料を支払う旨の商慣習又は事実たる慣習の存否
民法92条,借地法4条,借地法6条
判旨
宅地賃貸借契約の期間満了に際し、賃貸人の請求があれば当然に借主が更新料支払義務を負うという商慣習、または事実たる慣習は存在しない。
問題の所在(論点)
宅地賃貸借契約の期間満了時において、特約(合意)がない場合であっても、賃貸人の請求によって借主に更新料支払義務を課す商慣習、または「事実たる慣習(民法92条)」が存在するか。
規範
民法92条の定める「事実たる慣習」として認められるためには、その慣習が社会において法的確信を伴う程度に反復継続されており、当事者の意思を補充する規範として客観的に存在していることが必要である。更新料支払義務についても、契約上の合意がない限り、当然に生ずる慣習があるとは認められない。
重要事実
宅地賃貸借契約において、賃貸期間が満了した際、賃貸人(上告人)が賃借人(被上告人)に対し、更新料の支払いを求めた。賃貸人は、賃貸人の請求があれば借主は当然に更新料を支払うべき商慣習、または事実たる慣習が存在すると主張し、その支払いを求めて提訴した。
事件番号: 昭和42(オ)851 / 裁判年月日: 昭和43年6月27日 / 結論: 棄却
旧借地法第一二条(昭和四一年法律第九三号による改正前のもの)による地代増額請求権の行使による適正額の増額の効果は、増額請求の意思表示が相手方に到達した時に発生するものと解すべく、現行借地法第一二条第二、第三項が新設されても同条項施行前の増額請求については、同様に解すべきである。
あてはめ
原審が適法に確定した事実関係に基づけば、賃貸借期間満了時に賃貸人の請求のみによって当然に更新料支払義務が生ずるといった慣習が確立しているとは認められない。更新料の支払いは、個別の契約上の合意に基づいて行われるべき性質のものであり、合意がない以上、請求のみで法的義務が発生するという一般的・客観的な慣習の存在を肯定するに足りる証拠はない。
結論
更新料支払義務を生じさせる商慣習ないし事実たる慣習は存在しないため、更新料の支払請求は認められない。
実務上の射程
答案上は「更新料の支払いは合意(特約)がなければ請求できない」という原則を確認する際に用いる。契約に定めのない更新料を「慣習」を根拠に請求することは困難であることを示す判例である。あわせて、賃貸借の信頼関係破壊の法理についても言及があるが、本件では信頼関係を破壊するに足りる事情も否定されている。
事件番号: 昭和51(オ)478 / 裁判年月日: 昭和52年3月31日 / 結論: 破棄差戻
建物所有を目的とする土地賃貸借の賃借人が、賃借地上の建物に登記をしていないため、賃借地を買い受けた者に対し、形式的には、その賃借権をもつて対抗することができない場合であつても、右登記をしていなかつたことに宥恕されるべき事情があり、また、土地の買受人が、賃借権に対抗力のないことを奇貨として、賃借人に対し土地の明渡しを求め…
事件番号: 昭和35(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権の譲渡について賃貸人の承諾が得られない限り、民法612条に基づき、譲受人はその賃借権を賃貸人に対抗することができない。また、一時使用の賃貸借であることが確定された事案においては、借地法の適用を前提とする主張は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地の賃借権を譲り受けたと主張して賃…
事件番号: 昭和47(オ)1191 / 裁判年月日: 昭和48年4月13日 / 結論: 棄却
土地に対する使用貸借上の借主の権利の時効取得が成立するためには、土地の継続的な使用収益という外形的事実が存在し、かつ、その使用収益が土地の借主としての権利の行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを必要とする。
事件番号: 昭和37(オ)601 / 裁判年月日: 昭和39年6月4日 / 結論: 棄却
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