抵当権設定当時に土地とその地上建物が別個の所有者に属するときには法定地上権を設定したものとみなすことはできず、この理は両所有者の間に親子・夫婦の関係があるときでも同様である。
土地とその地上建物の各所有者の間に親子・夫婦の関係があるときと法定地上権の成否
民法388条
判旨
民法388条の法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時、土地と地上建物が同一の所有者に属していることを要し、所有者間に親子・夫婦関係があっても、別個の所有者に属する場合には法定地上権は成立しない。
問題の所在(論点)
抵当権設定当時、土地と建物の所有者が異なる場合であっても、その所有者間に親子・夫婦といった密接な親族関係があるときに、民法388条の「同一の所有者」という要件を充たし、法定地上権が成立するか。
規範
民法388条により法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時に土地と地上建物が「同一の所有者」に属することを要する。同条の趣旨は、同一所有者ゆえに利用権の設定が法律上不可能な場合に、競売後の建物存続を図る点にある。したがって、土地・建物が別個の所有者に属する場合には、たとえ親子・夫婦関係があっても、土地利用権の設定が法律上可能である以上、既存の利用関係に従うべきであり、法定地上権を認めるべきではない。
重要事実
抵当権の設定当時、対象となる土地とその地上にある各建物は、同一の所有者に属していなかった。建物所有者と土地所有者の間には、親子または夫婦という親族関係が存在していたが、権利の帰属は各人ごとに別個の状態にあった。その後、土地の競売が行われた結果、法定地上権の成否が争われるに至った。
事件番号: 昭和43(オ)846 / 裁判年月日: 昭和44年2月14日 / 結論: 棄却
抵当権設定当時土地および建物の所有者が異なる場合においては、その土地または建物に対する抵当権の実行による競落の際、右土地およぴ建物が同一人の所有に帰していても、民法三八八条の規定は適用または準用されない。
あてはめ
本件では、抵当権設定当時、土地と建物は親子・夫婦に各別に帰属しており、所有者を異にしていた。法定地上権制度は、土地・建物が同一所有者に属し、利用権設定が不可能な場合の救済措置である。本件のように所有者が別人であれば、親族間であっても賃貸借や使用貸借等の土地利用権を別途設定することが可能である。したがって、本件土地に法定地上権を設定したものとみなす余地はない。
結論
抵当権設定当時、土地と建物が親子・夫婦の別個の所有に属していた場合には、民法388条の法定地上権は成立しない。
実務上の射程
法定地上権の成立要件である「所有者の同一性」を厳格に解釈した基本判例である。答案上は、親族関係等の実態があっても形式的な所有権の帰属で判断すべき根拠として引用する。共有や土地・建物の一方のみに抵当権が設定された場合など、他の法定地上権の論点における前提として機能する。
事件番号: 昭和47(オ)461 / 裁判年月日: 昭和47年7月20日 / 結論: 棄却
消極(改正国税徴収法・昭和三四年法律第一四七号施行後の時期における事案)
事件番号: 昭和46(オ)844 / 裁判年月日: 昭和46年12月21日 / 結論: 棄却
建物の共有者の一人がその敷地を所有する場合において、右土地に設定された抵当権が実行され、第三者がこれを競落したときは、右土地につき、建物共有者全員のために、法定地上権が成立するものと解すべきである。
事件番号: 昭和41(オ)647 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 棄却
土地に対する抵当権の設定当時において地上に建物が存在しなかつた場合には、右抵当権と同一債権の担保を目的として重ねて右土地につき停止条件付代物弁済契約が結ばれた当時には地上に債務者所有の建物が存在したときでも、右代物弁済契約の条件成就後の法律関係につき、民法三八八条の類推適用による法定地上権の成立を認めることはできない。