不真正連帯債務者中の一人と債権者との間で右債務者の反対債権をもつてする相殺を認める判決が確定しても、右判決の効力は他の債務者に及ぶものではない。
不真正連帯債務者中の一人と債権者との間の訴訟において相殺を認めた確定判決の他の債務者に対する効力
民訴法199条2項,民訴法201条
判旨
不真正連帯債務者の一人と債権者間の確定判決の効力は他の債務者に及ばないが、当該債務者の相殺が判決で認められ確定した場合、実体法上の反対債権が存在する限り、他の債務者の債務もその限度で消滅する。
問題の所在(論点)
不真正連帯債務者の一人と債権者との間で相殺の既判力が生じた確定判決がある場合、他の債務者との訴訟において、裁判所は反対債権の存否を認定することなく当該判決を基礎として債務の消滅を認めることができるか。
規範
不真正連帯債務者の一人と債権者との間の確定判決の既判力は、他の債務者に及ばない。もっとも、実体法上有効な相殺がなされれば、債権が消滅した限度で他の債務者の債務も消滅する。不真正連帯債務者の一人と債権者の間で相殺を肯定する判決が確定した場合、反対債権が実体法上有効に存在するならば、既判力の効果により当該債務者は反対債権を再行使できず、債権者は利得を得るため、弁済と同視して他の債務者の債務も消滅する。
重要事実
被害者Dの遺族である原告らは、衝突事故につき加害車両の運行供用者E社と道路管理者である国に対し、損害賠償を請求した。第一審でE社は、同一事故によるDへの損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁を提出し、これが認められ相殺後の額で判決が確定した。一方、国との間では相殺の主張がなされず、相殺前の全額を命じる判決が出た。国は控訴審において、E社との確定判決により自らの債務も相殺額の限度で消滅したと主張したが、原審は反対債権の存否を自ら認定せず、確定判決の存在のみから国の債務消滅を認めた。
あてはめ
不真正連帯債務者間において既判力は相対的である(民訴法115条1項1号参照)。本件でE社と原告間の確定判決の既判力は、相殺に供された反対債権の存否(同法114条2項)を含め、国には及ばない。したがって、国が債務の消滅を主張する場合、裁判所は反対債権が実体法上有効であることを自ら認定判断しなければならない。原審が、確定判決の存在のみを理由に反対債権の存否を認定せず国の債務消滅を認めたのは、判決の効力に関する解釈を誤り、理由不備の違法があるといえる。
結論
他の債務者の訴訟において、反対債権の存否を別途審理・認定することなく、別個の不真正連帯債務者間の確定判決を援用して債務の消滅を認めることはできない。
実務上の射程
不真正連帯債務の相対的効力の原則を確認しつつ、相殺の既判力が生じた場合の事実上の影響を論じたもの。答案では、既判力の主観的範囲の原則を述べた上で、実体法上の債務消滅(弁済と同視できるか)の局面では、反対債権の存否を改めて立証・認定する必要があることを論ずる際に用いる。
事件番号: 昭和53(オ)1198 / 裁判年月日: 昭和54年9月7日 / 結論: 棄却
双方の過失に起因する同一交通事故によつて生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても、相殺は許されない。 (反対意見がある。)