一 甲と乙が共同の不法行為により丙に損害を加えたが、甲と丙との間で成立した訴訟上の和解により、甲が丙の請求額の一部につき和解金を支払うとともに、丙が甲に対し残債務を免除した場合において、丙が右訴訟上の和解に際し乙の残債務をも免除する意思を有していると認められるときは、乙に対しても残債務の免除の効力が及ぶ。 二 共同不法行為者の一人甲と被害者丙との間で成立した訴訟上の和解により、甲が丙の請求額の一部につき和解金を支払うとともに、丙が甲に対し残債務を免除した場合において、他の共同不法行為者乙に対しても残債務の免除の効力が及ぶときは、甲の乙に対する求償金額は、確定した損害額である右訴訟上の和解における甲の支払額を基準とし、双方の責任割合に従いその負担部分を定めて、これを算定すべきである。
一 共同不法行為者の一人と被害者との間で成立した訴訟上の和解における債務の免除の効力が他の共同不法行為者に対しても及ぶ場合 二 共同不法行為者の一人と被害者との間で成立した訴訟上の和解における債務の免除の効力が他の共同不法行為者に対しても及ぶ場合における求償金額の算定
民法437条,民法442条,民法719条
判旨
共同不法行為者の一方が被害者と和解し、一部の支払いをもって残債務を免除された場合、被害者に他の債務者の債務も免除する意思があれば、和解支払額を基準に求償額を算定すべきである。
問題の所在(論点)
共同不法行為者の一方が被害者と和解し、総損害額の一部を支払うとともに残債務の免除を受けた場合、他方の債務者に対する求償金額を算定する基礎となる「損害額」は、客観的な損害額か、それとも現実の和解支払額か。被害者が他の債務者の債務をも免除する意思を有していた場合の算定基準が問題となる。
規範
共同不法行為者の債務は不真正連帯債務であり、一人の債務者に対する免除は原則として相対的効力しか有しない。しかし、被害者が和解に際し、他の債務者の残債務をも免除する意思を有していると認められるときは、当該他者に対しても免除の効力が及ぶ。この場合、他の債務者は残債務を訴求される可能性がなくなるため、求償権者は現実の和解支払額を基準とし、各自の責任割合に従って求償金額を算定するのが相当である。
重要事実
被用者E(被上告人の従業員)と上告人は、架空のオートローン契約により被害者Iに損害を与えた(責任割合はE:上告人=6:4)。Iは上告人に約3300万円を求めた訴訟で、上告人が2000万円を支払う代わりにIが「その余の請求を放棄する」との訴訟上の和解を成立させた。上告人は和解金支払後、使用者である被上告人に対し、自己の負担部分(和解金の4割=800万円)を超える1200万円の求償を求めた。原審は、客観的な総損害額(約4200万円)を基準に求償額を算定したため、上告人の請求を大幅に棄却した。
あてはめ
本件和解調書にはIの意思が明記されていないが、Iが被上告人に対し残債務を請求した形跡がなく、むしろ上告人の求償訴訟に協力的な姿勢を示していた。また、和解時には既に被上告人に対する債権の消滅時効期間が経過していた。これらの事実は、Iが本件和解により被上告人との関係も含め全面的に紛争を解決する意向(被上告人の残債務をも免除する意思)を有していたことを推認させる。そうであれば、被上告人は最早Iから請求を受ける恐れがないため、客観的損害額ではなく現実の和解額2000万円を基礎とすべきである。これに責任割合(上告人4割:被上告人等6割)を乗じると、上告人の負担は800万円、求償可能額は1200万円となる。
結論
被害者が他の債務者の債務をも免除する意思を有していたと認められる場合には、和解による現実の支払額を基準に求償額を算定すべきであり、本件ではその意思の有無を審理させるため原審に差し戻す。
実務上の射程
不真正連帯債務における免除の相対効(民法441条、旧437条)の例外として、被害者の処分意思を認定することで実質的な公平を図る射程を有する。答案上は、まず不真正連帯債務であることを明示した上で、和解の文言や背景事情(追及の有無、時効等)から「他の債務者をも免除する意思」を認定し、求償の基礎となる額を確定させる際に用いる。
事件番号: 昭和41(オ)58 / 裁判年月日: 昭和41年11月18日 / 結論: 棄却
一 使用者は、被用者と第三者との共同過失によつて惹起された交通事故による損害を賠償したときは、右第三者に対し、求償権を行使することができる。 二 右の場合における第三者の負担部分は、共同不法行為者である被用者と第三者との過失の割合にしたがつて定められるべきである。