複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において,その交通事故の原因となったすべての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには,絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について,加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う。
複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故においていわゆる絶対的過失割合を認定することができる場合における過失相殺の方法と加害者らの賠償責任
民法719条,民法722条2項
判旨
複数の加害者と被害者の過失が競合する場合、各加害者は被害者の絶対的過失割合による過失相殺後の全額について不真正連帯責任を負い、加害者間の求償は各々の負担部分に基づき算定される。
問題の所在(論点)
複数の加害者と被害者の過失が競合する場合における過失相殺の計算手法(相対的過失相殺の可否)および、加害者間の求償関係における自賠責保険金の充当方法。
規範
1. 複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する場合、交通事故の原因となったすべての過失の割合(絶対的過失割合)を認定できるときは、絶対的過失割合に基づく過失相殺後の損害額について、加害者らは民法719条に基づき不真正連帯責任を負う。 2. 加害者間の求償関係において、各加害者は自己の絶対的過失割合に基づく負担部分を超える額を支払った場合に、他の加害者に対しその負担部分に応じて求償できる。 3. 自賠責保険金は被保険者の損害賠償債務を補填するものであるから、共同不法行為者間の求償関係では、当該保険金を受け取った被保険者の負担部分に充当される。
重要事実
上告人の被用者D(駐車過失)、被上告会社従業員E(はみ出し運転過失)、対向車運転者F(速度超過過失)の三者が関与する事故が発生した。絶対的過失割合はD:E:F=1:4:1と認定された。被害者Fの損害額は約581万円であった。被上告会社の保険者である被上告組合は、Fに対し約474万円を支払い、自賠責保険金120万円を受領した。被上告組合は、上告人に対し、共同不法行為に基づく求償を請求した。
あてはめ
1. Fの損害581万1400円に対し、Fの絶対的過失(6分の1)のみを控除すべきであり、被上告会社と上告人は残額484万2833円につき不真正連帯責任を負う。加害者ごとの相対的な過失相殺を行うことは、被害者がいずれの加害者からも全額の賠償を受けられるとする民法719条の趣旨に反するため許されない。 2. 加害者間の負担部分は、D(上告人)が5分の1、E(被上告会社)が5分の4となる。したがって、上告人の負担部分は96万8566円である。 3. 被上告組合が支払った約474万円から、被上告会社の負担部分(387万4266円)を差し引いた87万3388円が上告人への求償額となる。自賠責保険金120万円は支払者である被上告会社の負担部分に充当されるため、求償額の算定に直接影響しない。
結論
被上告会社及び上告人は、被害者の絶対的過失割合を控除した額につき不真正連帯責任を負う。被上告組合は、被上告会社の負担部分を超えて支払った額(87万3388円)の限度で、上告人に対し求償権を代位取得する。
実務上の射程
共同不法行為と被害者の過失が競合する事案(いわゆる混合過失)において、過失相殺後の損害額を算出する際のスタンダードな枠組みを示す。答案上では、各加害者と被害者の過失を個別に相殺するのではなく、まず被害者の過失(絶対的割合)を全体から引き、残額について加害者に連帯責任を負わせる論理構成を採るべきである。
事件番号: 昭和41(オ)58 / 裁判年月日: 昭和41年11月18日 / 結論: 棄却
一 使用者は、被用者と第三者との共同過失によつて惹起された交通事故による損害を賠償したときは、右第三者に対し、求償権を行使することができる。 二 右の場合における第三者の負担部分は、共同不法行為者である被用者と第三者との過失の割合にしたがつて定められるべきである。
事件番号: 昭和60(オ)1145 / 裁判年月日: 昭和63年7月1日 / 結論: 破棄自判
被用者と第三者との共同不法行為により他人に損害を加えた場合において、第三者が自己と被用者との過失割合に従つて定められるべき自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、第三者は、被用者の負担部分について使用者に対し求償することができる。