1 交通事故と医療事故とが順次競合し,そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって,運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において,各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯責任を負うべきものであり,結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害額を案分し,責任を負うべき損害額を限定することはできない。 2 交通事故と医療事故とが順次競合し,そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって,運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において,過失相殺は,各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり,他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしんしゃくしてすることは許されない。
1 交通事故と医療事故とが順次競合し運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において各不法行為者が責任を負うべき損害額を被害者の被った損害額の一部に限定することの可否 2 交通事故と医療事故とが順次競合し運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合の各不法行為者と被害者との間の過失相殺の方法
民法719条,民法722条2項
判旨
交通事故と医療事故が順次競合して一人の死亡を招いた場合、両者は共同不法行為となり、各加害者は損害全額について連帯責任を負う。また、過失相殺は各加害者ごとに被害者との過失割合を個別に対比して行い、寄与度による損害額の案分は許されない。
問題の所在(論点)
交通事故と後の医療事故が重なった場合、各加害者は全損害を賠償すべきか(寄与度による案分の可否)。また、過失相殺はどのように行うべきか(個別相対説の可否)。
規範
1. 複数の不法行為が順次競合し、不可分の一個の結果を招来した場合、民法719条の共同不法行為が成立し、各加害者は損害全額を連帯して負担する。各不法行為者の寄与度により損害を案分することは、被害者保護の趣旨に反し許されない。 2. 共同不法行為における過失相殺は、損害の公平な分担の観点から、各加害者と被害者との間の個別的な過失割合を基準として相対的に判断すべきであり、他の加害者の過失割合をしん酌してはならない。
重要事実
被害者E(当時6歳)は、自転車で交差点に進入した際に自動車と接触(本件交通事故)。その後搬送された病院の医師Bは、頭部レントゲンで骨折を認めなかったため、CT検査や経過観察を行わず、具体的注意を与えずに帰宅させた。Eは帰宅後容態が急変し、硬膜外血腫による脳圧亢進で死亡した(本件医療事故)。早期治療があれば救命の高度な蓋然性があった。被害者側にも、交通事故時の不注意(3割)と、帰宅後の重篤な兆候を見落とした過失(1割)が認められた。
あてはめ
1. Eの死亡という不可分の一個の結果に対し、交通事故と医療事故の双方が相当因果関係を有している。したがって、両者は共同不法行為となり、被上告人(病院側)は寄与度の限度ではなく損害全額について賠償義務を負う。 2. 被上告人の賠償額を算定するにあたっては、医療事故の文脈における被害者側の過失(1割)のみを対比すべきである。交通事故における過失(3割)を重ねてしん酌したり、事故ごとの寄与度(5割ずつ等)で賠償額を限定することは、連帯関係を免除することになり認められない。
結論
被上告人は、被害者の全損害額から、本件医療事故における被害者側の過失割合(1割)を控除した額の全額について賠償責任を負う。
実務上の射程
異時的共同不法行為における責任範囲と過失相殺の枠組みを示した重要判例。答案では、まず「不可分の一個の結果」を指摘して719条の連帯責任を導き、次に過失相殺において加害者ごとに過失割合を個別評価(個別相対説)することを論じる際に用いる。
事件番号: 昭和41(オ)58 / 裁判年月日: 昭和41年11月18日 / 結論: 棄却
一 使用者は、被用者と第三者との共同過失によつて惹起された交通事故による損害を賠償したときは、右第三者に対し、求償権を行使することができる。 二 右の場合における第三者の負担部分は、共同不法行為者である被用者と第三者との過失の割合にしたがつて定められるべきである。