Aが運転しBが同乗する自動二輪車と,これを停止させる目的で前方の路上に停車していたパトカーとが衝突し,Bが死亡した交通事故につき,Bの相続人が上記パトカーの運行供用者に対し損害賠償を請求する場合において,(1)AとBは,上記交通事故の前に上記自動二輪車を交代で運転しながら共同して暴走行為を繰り返し,上記パトカーに追跡されていたこと,(2)Aは,道路脇の駐車場に停車していた別のパトカーを見付け,これから逃れるため制限速度を大きく超過して走行するとともに,その様子をうかがおうとしてわき見をするという運転行為をしたため上記交通事故が発生したものであることなど判示の事実関係の下では,Aの上記(2)の運転行為はAとBが共同して行っていた上記(1)の暴走行為の一環を成すものとして,過失相殺をするに当たり,Aの上記(2)の運転行為における過失をBの過失として考慮することができる。
Aが運転しBが同乗する自動二輪車とパトカーとが衝突しBが死亡した交通事故につき,Bの相続人がパトカーの運行供用者に対し損害賠償を請求する場合において,過失相殺をするに当たり,Aの過失をBの過失として考慮することができるとされた事例
民法722条2項
判旨
共同暴走行為の最中に発生した事故において、運転者と同乗者が共同して暴走行為を行っていたという関係にある場合、同乗者の過失相殺にあたって運転者の過失を「被害者側の過失」として考慮できる。
問題の所在(論点)
共同暴走行為に従事していた同乗者Bが死亡した事故において、運転者Aの過失を民法722条2項の過失相殺においてB側の過失(被害者側の過失)として考慮できるか。
規範
民法722条2項の「被害者の過失」には、被害者本人と身分上ないし生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失(被害者側の過失)も含まれる。共同して暴走行為を繰り返していた者が同乗する車両が事故を起こした場合、当該事故に至る運転行為が共同暴走行為の一環を成すと認められるときは、公平の見地に照らし、運転者の過失を被害者(同乗者)の過失として考慮することができる。
重要事実
被害者Bは友人Aと共に、約2時間にわたり消音器を改造した二輪車にノーヘルで分乗し、交代で運転しながら蛇行運転等の暴走行為を繰り返していた。警察の追跡から逃走中、Aが運転しBが同乗する二輪車が、制止のため道路を塞いで停車していたパトカーに衝突し、Bが死亡した。事故直前、Aはパトカーから逃れるため速度超過をし、かつ友人の動向を確認するためわき見をしていた。
あてはめ
AとBは、事故当夜2時間にわたり共同して暴走行為を反復しており、事故直前のAによる速度超過やわき見といった運転行為(本件運転行為)も、パトカーによる取締りから逃れるためになされたものである。このような経緯や態様に照らせば、本件運転行為はAの単独行為ではなく、BとAによる共同暴走行為の一環を成すものといえる。したがって、公平の観点から、Aの過失をBの過失として相殺の対象とすべきである。
結論
Aの過失を被害者側の過失として考慮できる。原審がAとBに身分上の一体性がないとして過失相殺を否定した判断は、法令の違反があるため破棄・差し戻される。
実務上の射程
通常、友人関係では「被害者側の過失」の適用は否定されるが、本判例は「共同暴走行為」という特段の事情がある場合にその射程を広げたものである。答案では、単なる同乗か、目的を共にした危険な共同行為の一環としての同乗かを区別し、公平の原則に基づき「一体性」を認定する際の根拠として用いる。
事件番号: 平成6(オ)940 / 裁判年月日: 平成9年9月9日 / 結論: その他
被害自動車の運転者とこれに同乗中の被害者が恋愛関係にあったものの、婚姻していたわけでも、同居していたわけでもない場合には、過失相殺において右運転者の過失が被害者側の過失と認められるために必要な身分上、生活関係上の一体性があるとはいえない。