いずれも同一の個人の支配する同族会社の一方が他方に金銭の貸付をした場合において、貸付をした会社が、実際には同族会社であるために無利息ないし著しく低率の利息で貸付けたにもかかわらず、会社の損益計算上は通常の金融取引と同程度の利息を未収利息として計上し、その後の事業年度においてこれを貸倒損失として損金処理をしたときは、右貸倒処理は同族会社の行為計算の否認の規定に基づき、これを否認することができる。
同族会社の行為計算の否認が認められた事例
法人税法(昭和40年法律第34号による改正前のもの)30条
判旨
同一の個人が支配する同族会社間において、無利息または著しく低率で金銭を貸し付けた後、通常の利息を未収利息として計上し、これを貸倒損失として損金処理する行為は、法人税法上の同族会社の行為計算否認の対象となる。
問題の所在(論点)
同一個人に支配される同族会社間において、実態として無利息等の貸付けが行われたにもかかわらず、形式上通常の利息を計上し、後にこれを貸倒処理する行為が、同族会社の行為または計算の否認規定の対象となるか。
規範
同族会社間の取引において、経済的合理性を欠き、通常の独立当事者間では行われないような不自然・不合理な形態をとることで租税負担を不当に減少させていると認められる場合には、法人税法(旧30条、現132条)に基づき、その行為または計算を否認し、税務上正当と認められる態様で所得を再計算することができる。
重要事実
上告人は、同一の個人が支配する他の同族会社に対し、無利息または著しく低率で金銭を貸し付けていた。しかし、上告人は会計上、税務上の認定利息の取扱いに準じて、通常の利息相当額を未収利息として益金に計上した。その後、当該未収利息を回収不能として貸倒損失の損金に計上したため、更正処分を受けた。
あてはめ
本件では、実際には同族関係ゆえに無利息等の条件で貸付けが行われている。にもかかわらず、通常の利息を計上した上で貸倒損失を計上する一連の処理は、独立した第三者間では通常行われない不自然・不合理なものである。このような処理は、実態のない損失を創出し、租税負担を不当に回避しようとする行為にほかならない。したがって、特段の事情がない限り、当該貸倒処理は経済的合理性を欠くものとして否認されるべきである。
結論
本件の貸倒処理は、同族会社であるためにされた不合理な租税負担の不当回避行為にあたり、同族会社の行為または計算の否認規定に基づき否認することができる。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
同族会社間での低利融資およびそれに付随する会計操作(認定利息の計上と貸倒処理)に対する否認の可否を論じる際のリーディングケースである。答案では、客観的な「経済的合理性の欠如」を認定する際の具体例として、取引条件の不自然さを指摘するために用いる。
事件番号: 令和2(行ヒ)303 / 裁判年月日: 令和4年4月21日 / 結論: 棄却
1 法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、同項各号に掲げる法人である同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいう。 2 …
事件番号: 平成11(行ヒ)169 / 裁判年月日: 平成16年7月20日 / 結論: 破棄自判
法人税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)2条10号に規定する同族会社に当たる有限会社の代表者で出資持分の大半を有する社員が,同会社に対して3455億円を超える金員を無利息,無期限,無担保で貸し付けたことに所得税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)157条の規定を適用され,利息相当分の雑所得があるとして…
事件番号: 平成10(行ツ)77 / 裁判年月日: 平成16年9月7日 / 結論: 破棄自判
会社がその代表者に代わって同人の借入金の利息を支払ったことにより,その経済的利益に相当する同人に対する給与等(賞与)の支払があったことになって会社に源泉徴収による所得税の納税義務が客観的に成立したが,実際にされた納税の告知は,会社が同人に上記利息相当額を無利息で貸し付け,この貸付けに係る得べかりし利息相当額の経済的利益…
事件番号: 昭和50(行ツ)82 / 裁判年月日: 昭和51年7月13日 / 結論: 棄却
一、営業権とは、当該企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊の製造技術及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性等を総合した、他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産的価値を有する事実関係である。 二、省略