交通事故に基づく損害賠償請求につき、当事者間に成立した和解契約中の「右合意により、本件損害賠償問題は一切円満解決したので、今後本件に関しては如何なる事情が生じても決して異議の申立、訴訟等をしないことを確認する」旨の本旨は、債務者が示談による約定を履行したときは債権者において将来異議の申立、訴の提起等は一切しない旨の合意を意味するにすぎず、債務者がその約定を履行すると否とにかかわらず、右示談内容につき不起訴の合意が成立したことを意味するものではない。
不起訴の合意にあたらない場合
民訴法第2編第1章
判旨
和解契約における不起訴の合意は、特段の事情のない限り、債務者が和解に基づく約定義務を履行することを前提として、その余の請求や訴訟提起を放棄する趣旨であると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
和解契約に含まれる不起訴の合意が、債務者(加害者)による約定義務の履行を前提とするものか、あるいは履行の有無を問わず直ちに訴えを制限する効力を有するのか。
規範
和解(民法695条)に基づき「一切の異議申立や訴訟をしない」旨の合意(不起訴の合意)がなされた場合であっても、その本旨は、債務者が和解に基づく約定を履行することを停止条件ないし前提とするものである。したがって、債務者が約定義務を履行しない限り、不起訴の合意の効力は発生せず、債権者は依然として訴えを提起し、権利の保護を求めることができる。
重要事実
上告人(被害者)と被上告人(加害者側)は、交通事故の損害賠償について和解契約を締結した。示談書には「本件解決につき今後一切の異議申立や訴訟をしない」との文言があった。原審は、この文言に基づき、加害者の履行の有無にかかわらず不起訴の合意が成立したとして、上告人の訴えを訴えの利益(権利保護の利益)を欠くものとして却下した。
あてはめ
本件和解契約の本旨を検討すると、上告人が事故後6か月以内に治癒する見込みのもとで締結されたものである。このような状況下での「一切の訴訟をしない」との確認は、あくまで「被上告人らが示談による約定を履行したとき」に初めて機能する趣旨であると解される。被上告人らが約定義務を履行していない段階で、直ちに不起訴の合意が成立したと解することは、当事者の合理的な意思に反する。
結論
被上告人らが約定を履行したか否かにかかわらず不起訴の合意が成立したとした原判決には、和解契約の解釈を誤った違法がある。したがって、訴えを却下した原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
和解に基づく不起訴合意の「条件性」を示した判例である。答案上では、和解の法的性質や効力を論じる際に、「特段の事情がない限り、債務の履行が不起訴合意の前提である」という解釈手法(意思表示の合理的解釈)として活用する。債務不履行がある場合に、なおも訴えの利益を否定する相手方の主張に対する反論として有用である。
事件番号: 昭和38(オ)691 / 裁判年月日: 昭和39年6月18日 / 結論: 棄却
未乾燥の印刷物を断截して製本作業をするとその結果インキの光沢を失い、断截機の押力でインキが印刷物の紙の裏に附着したりインキが飛んだり紙を汚染し出来上りが不良になるという事実を、公知の事実ということはできない。